ペストバスターズ・タ〜隊員は、この任務に就いて2年ほど経ったある日、ゴキブリとの“いたちごっこ”に頭を痛めていた。
右も左もわからないこの業界に入り、先輩隊員の仕事の仕方を見様見真似で学び、自分でも多くの本を読んだりネットで検索するなどして知識を得、できることを真面目に取り組んできた。
しかし、現場で発生しているゴキブリたちは予想を上回る行動をし、タ〜隊員の攻撃を嘲笑うかのように出没を続けた。
たかがゴキブリ、されどゴキブリ。
彼らも生き残るために必死であるため、まるで人間との知恵比べのようだ。
目次
タ〜隊員は思い立つ
「そうだ ゴキブリ、飼おう。」
深夜3時──虫籠を手にしたタ〜隊員は、真っ暗闇の山の中にいた。この時間帯は、カブトムシやクワガタが樹液を吸っていることを考えると、ゴキブリも同じような行動をするだろうと踏んだからだった。
案の定、落ち葉を蹴るようにガサゴソとうごめくゴキブリたちがいる。そこでタ〜隊員は5匹ほどを捕まえた。
タ〜隊員は、この「ゴキブリを飼う」という計画のため、予め自宅1階の1室をDIYしていた。フローリングの床をくり抜き、建築資材で使用されるコンパネ(コンクリート・パネル)で囲う。その大きな囲いをさらに4枡になるように仕切り、それぞれの部屋(A棟・B棟・C棟・D棟)を設けた。
山で捕獲した5匹ほどのゴキブリたちを、まずはA棟に入れて、透明のアクリル板で蓋をする。透明であることで、蓋をした状態でも中の様子を観察できるようにしたのだ。
残る3つの部屋だが──棲息している場所ごとに分けることを目的としているので、B棟には「飲食店にいたゴキブリ」、C棟には「汚水槽や下水にいたゴキブリ」、D棟には「ゴミ置場など湿気の多い場所にいたゴキブリ」をそれぞれ5匹ずつ捕獲し、振り分けた。

タ〜隊員のゴキブリ観察記。
繁殖力の高さに驚愕!! あっという間に“うじゃうじゃ”
「エサ」は2日に1回と決め、バナナの皮など食べ物の残渣物を中心に、4棟に平等に与えた。ある時は新聞紙を湿らせたものを入れ、卵を産む場所を作った。
さてこの同様の条件で、棲息していた場所によって捕獲したゴキブリたちはどうなったのか。そこには驚くべき結果があったという。
「4棟に分けたゴキブリのうち、一番繁殖力が高かったのはどれだと思いますか?」
タ〜隊員は、そうクイズを出してきた。
おさらいすると
A棟・・・・・山で採取したゴキブリ
B棟・・・・・飲食店にいたゴキブリ
C棟・・・・・汚水槽や下水にいたゴキブリ
D棟・・・・・ゴミ置場など湿気の多い場所にいたゴキブリ
答えは、C棟「汚水槽や下水にいたゴキブリ」だったという。
「観察からわずか1ヶ月半の間に、3倍の数(15匹程)になっていました。圧倒的にC棟だけが増えていきましたね。その理由はわかりませんが、推測するに、真っ暗な環境が彼らがいた場所に近かったからなのか、或いは汚水という雑菌の温床下を生き抜けるほどの生命力の賜物なのか・・・」
そしてこうも付け加える。
「山で捕獲したA棟のゴキブリは、一番繁殖能力が低かったです。が、艶は一番あり、山の中にある自然の食材という栄養状態がよかったのではないかと思います」
当初、各5匹ずつ(計20匹)で観察を始めたゴキブリたちは、2年間の観察記の中で、なんと600匹にも膨れ上がっていたという。2年間で30倍だ。
タ〜隊員のゴキブリ観察記。
臭いや音は? 食の好みは? 活発な時期は?
ゴキブリ総勢600匹。考えただけで鳥肌が立つ異常事態だが、それを「ペット」にしたタ〜隊員。一体どんな生活だったのか──。
まず気になるのは「臭い」だ。
過去にタ〜隊員は、「臭いでゴキブリの存在有無、種類をある程度嗅ぎ分けることができる」と語っていた。まさに「ゴキブリ・ソムリエ」だ。
ということは、そのゴキブリ・ソムリエたる能力は、自宅で飼っていた時に培われたこととなり、引いてはゴキブリには「臭い」があるということになる。
──で、どんな臭いなのかを訊いてみる。
「蓋を閉めているにも関わらず、部屋全体に強烈な臭いが充満するほど。その臭いがどんなものかというと・・・表現しづらいところですが、強いて言えば煮詰まったコーヒーが腐ったような・・・、雑巾を洗わずそのまま放置したような・・・、浮浪者の衣類のような・・・。いずれにしても、生温かく生臭い感じがします」
この強烈な臭いの中、タ〜隊員のプロ意識のためと協力されたご家族の皆様にも頭が下がる。しかも、訊けば600匹がうごめく「ガサゴソ」という羽同士が擦り合う音もまた、かなりの音量になったという。
そんなゴキブリたちの「好きな食べ物」とは何なのかについても訊いてみた。
「先にお話したバナナの皮もよくあげましたし、食べ物なら何でも喜んで良く食べました。特に好きな物は、溶かしたチョコ、ご飯のふやけたもの、腐ったびわでした。びわに関しては、新鮮なものより腐ったもののほうが断然食いつきました。おそらく臭いが強まるからだと思います。あとは油っこいものは好んでいました」
また、年間を通じた活動が活発になる時期は、6月・9月・10月だったとも語った。

突如訪れた結末は、鳥肌必至!!!!!!
まさかの「蓋閉め忘れ」で100匹が大放出!?
ゴキブリ・ペットとの別れは、突如やってきた。
「D棟」の蓋を閉め忘れたことにより、家中にゴキブリたちが一斉に放出される事態が発生。その数なんと100匹あまり!!!!!
1匹でも絶叫に値するゴキブリが、家の至る所にうじゃうじゃ現れるなど、鳥肌を通り越して卒倒してしまうかもしれない!
しかしプロフェッショナル・タ〜隊員は、こんな前向きなコメントを口にしている。
「群がっている者たちは掃除機で吸うなどしましたが、家で駆除の実践ができるのは非常に勉強になりました。中にはおとなしい“子”もいて、D棟の部屋でそのままじっとしていました」
ペットであったゴキブリだが、仕事のための教材でもあったゴキブリ。最終的には「駆除」という形でお客様に貢献することが目的であることを念頭に、最後はしっかり駆除の実践を行ったというタ〜隊員。
「生態や臭い、活動時期など、年間を通じて日々観察したことで、今の仕事に活かせていることが多いですね。特に臭いの嗅ぎ分けは、私だけができる能力だと自負できるところかなと思います」
そんなタ〜隊員が最後に語った言葉は、
「捕獲したゴキブリたちが卵を生み、親になり、また生まれてきた子たちが脱皮をする。その脱皮した後のゴキブリは真っ白く、ゴキブリとは思えない美しさに感動すら覚えました。こちらも駆除の対象物という域を超え『大きくなれよ』『いっぱい食えよ』なんていう、愛情に似た感情で見守る瞬間もありました」
そんなタ〜隊員は、そうした一縷の感動を胸に、今日もまたゴキブリの衛生被害に頭を悩ませている方の元へ赴く。培った「臭いの嗅ぎ分け」を武器に、1匹残らず駆除してやるぞと意気込んで。
敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。