もはや「タ〜隊員ファンの皆様、こんにちは」。
そんな挨拶をしたくなるほど“お馴染み”になっているタ〜隊員。早い話、「害虫獣駆除のベストを尽くしたい」男の熱意は、昨今ニュースで騒がせているトコジラミまでもペットにして生態を観察していたという。
タ〜隊員の害虫獣飼育3部作の最終章(多分)として、今回は「トコジラミ編」をぜひお楽しみいただきたい。
タ〜隊員は、三たび思い立つ
「そうだ トコジラミ、飼おう。」
コロナ禍が明け、インバウンドツーリズムが戻ってきた日本。都心や観光地を中心に多くの外国人客を目にすることが増えたが…それに比例するように増えているのが「トコジラミ」だ。
トコジラミ──その昔は「南京虫」とも呼ばれていたが、中国特有の害虫かどうかは不明。名前にシラミとつくものの、カメムシの仲間であることが分かっており、吸血性という点で人体に影響と嫌悪をもたらす。
刺されて血を吸われると、体内に抗体ができることで強烈な痒みが発生し、人によってはアナフィラキシーショックを引き起こすことがあるというから重大だ。
そのトコジラミを、タ〜隊員は「飼った」だけでなく、ごはんとして「自分の血を吸わせてあげた」というから鳥肌必至のエピソード!
もう、まどろっこしく、トコジラミの駆除の実態などを聞くのは後回しにして、一番興味のある「トコジラミとの生活」から攻めていく。
──で、なんで飼ったんですか? いつからですか?
「実はメンバーの誰にも話していなかったんですけど、1年3ヶ月ぐらい飼っていました(笑)。なんで飼ったかといえば、疑問点を確認したかったからですね。
トコジラミは旅行客のカバンなどにくっついて日本にやってくることがわかっていますが、生態などはあまり知られていなくて、本やネットにも一定のことしか書いてありませんでした。
現場で対応している私からしてみると『えぇ〜そうかなあ〜』と疑問に思うことが多々あったので、こうなったら飼ってみるしかない、と思い立ったんです」
ぶっちゃっけ…前回のネズミ、前々回のゴキブリと同じ展開ではあるが、わからないことを有耶無耶にして、依頼のあったお客様に「精一杯やってるんですけどねえ」などと言い訳をしたくないのだろう。
──で、どうやってトコジラミを集めたんですか?
「ご依頼のあった旅館に行った時、虫眼鏡・ルーペ・ピンセットに収集用のケースを持って行きました。そこでは卵(約20個)、幼虫(約30匹)、成虫(約30匹)を採取しました。
卵の色ですが、本やネットには「白」と書いてありましたが、私には薄黄色に見えました。彼らがいる場所は木材周辺が一番多かったです。床にカーペットが敷いてあっても、その隙間の木材部分を好んでいるようでした。
目視だけでも100匹はいました」
タ〜隊員のトコジラミ観察記。
ペット達には「自分の腕の血をあげるね」(寒)
トコジラミは吸血性であることがわかっている。しかし「血」以外の食料もあるのか…いや、あってほしいぐらいの気持ちでこう訊いてみた。
── エサは? どのぐらいのペースで何をあげていたんですか?
「エサですか? 私の血ですよ。吸血害虫なので、それしか食べませんからね。どのぐらいのペースかといえば、3ヶ月に1回ぐらい。私の痒みが治まる頃です」
もうちょっと、これ以上質問する気が失せるほど、筆者にも得体の知れぬ痒みが腹や背中を襲ってくるのだが、もちろんそれは確実に気のせいだ。こちらも仕事なのでもう少し突き進んで訊いてみる。
── 「私の血」って言いますけど、どうやって…?
「今回トコジラミを飼うにあたり、80センチぐらいの半透明の洋服収納ケースを利用しました。
『トコジラミは暗闇を好むのか』という検証をしたかったので、ケース内を上下2層に手作りし、下半分は黒いガムテープなどで暗がりを作りました。よって、中間から上は半透明のままで光も入ります。
蓋の周囲には、スポンジに粘着テープが着いている「隙間テープ」を使って逃げない工夫を。それにより開け閉めができます。
エサは「私の腕の血」なので、丸い穴を設けていて、そこから腕を突っ込むだけです。腕を入れるとみんな徐々に寄ってきて、私の腕にしがみついてチュウチュウ吸っているようでしたよ。何匹か? ほぼ全員なので100匹近いんじゃないですか?
吸われている時は痛みなどの感触はなく、腕の良い看護師さんの採血みたいな感じでしたよ、あはは(笑)」
ここまで聞いて「はい、ありがとうございました、さよなら〜」と取材を終えたい気持ちになったが、まだ帰れない。勇気を振り絞ってもう少し聞くしかない。
── なにも…タ〜隊員の血じゃなくてもよかったんじゃないですか? スーパーで打っているお肉とか動物の血でも。
「ああ〜、それなら魚の血は与えてみましたけど、見向きもしませんでした。生臭いからなんですかね。お肉の血は、スーパーで購入するお肉だとなかなか血を確保することはできなかったのでやってないです」
タ〜隊員の血を吸って成長したトコジラミたちは、最終的に400匹ほどになったという。
やっぱり飼ってよかった!
生態を知ることで駆除に格段の違いが
“タダ”で血を与えているのだから、何かを掴みたい──。
そんなタ〜隊員はある生態を見つけたという。
── 以前お話を伺った時、「トコジラミは下敷きほどの隙間があればそこに卵を産み落とす」って言っていたじゃないですか。それは生態と関係があったんでしょうか。
「はい、柱と壁の隙間などに卵を産み落とすことは間違いないのですが、飼ってみて発見したことがあったんです。
卵と幼虫ですが、これをルーペで見ると粘っこいものが付着しているのがわかる。つまり、隙間に卵を産み落とすことを想定した生態ですよね? しかも木材周辺にいるのも『くっつきやすいから好き♡』ということであって、毛足の長いカーペットや絨毯などは好きじゃないというより落っこちてしまうから選ばないんです。
だから最近私は、現場でメンバーに『下ばかりを見るな、木材でできた上の方も探せ』という指示を出しています」
── ちなみに、ペットにする前の駆除の方法と、現在の方法に違いはありますか?
「あります。現在他社さんもまだやっていることと思いますが、ペットとして飼う前は私も薬剤を撒くということを繰り返しやっていました。しかし、彼らは極小の隙間に逃げ込むことができるんですよ。つまり薬剤から逃げることができる。
なので今はどうしてるかというと、『卵を潰す』ことを目的に、アルミでできたメジャーを15センチほどに切って、隙間に入れて卵を潰しています」
タ〜隊員「害虫獣ペット」3部作はこれにて「完」となるが、毎度ながら嫌悪物を自宅に引き寄せ身を持って経験し、それを現場に活かすという姿勢が涙ぐましい。
「トコジラミが暗闇が好きだというのは本当でした。もし旅館などに泊まることがあったら、旅行カバンをお風呂場などに置いて電気を点けた状態にするといいです。やつらは一歩も動けないことと思いますよ!
また寝ている間に血を吸われたくなかったら、枕元の照明も点けておくと対策できるかも知れませんね」
インバウンドの影にトコジラミに悩まされている日本。タ〜隊員のアドバイスを頭の片隅に、快適な旅と快適な日常を送りたいものだ。
しかしもしトコジラミの大量発生に悩まされたら…ペストバスターズ・タ〜隊員が一網打尽にやっつけてくれることだろう。
敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。