穏やかな昼下がりが一転、
敵は突如やってくる!
その日は緊急出動もなく、比較的穏やかな日であった。
いつになく味わいながらお弁当を食べたタカシ隊員は、
食後の缶コーヒーを開けた。
(今日の弁当、旨かったな〜)
そんな余韻にひたる余裕すらあったため、
(今日は獣の出動はなさそうだ)
と、捕獲器の手入れを始めた。
そこへ、穏やかな昼下がりを切り裂くような電話の音。
すぐさまユウシ隊員が、
血相を変えて駆け寄ってくるのだ。
「タカシ隊員!!!!! 獣が出没したようです!」
タカシ隊員は
(穏やかそうに見えたのは、嵐の前の静けさか)
と心の中でつぶやくと
「よし、急いで現場へ急行だ!
今日も忙しくなりそうだな」
と、ユウシ隊員とともに車に乗り込んだ。
電話の依頼人は、「キキッ」という鳴き声を聞いたという。
しかも10分おきぐらいに鳴き、心が落ち着かないとも。
その鳴き声の主は一体誰なのか。
ネズミなどの小動物か、それとも猿やイノシシ、
まさかクマなんてことはあるまい──。
そんなことを危惧しながら、二人の隊員は現場へを急いだ。
姿を一向に現さない敵に、
熟練のタカシ隊員にも焦りの色が……
現場となるお宅に到着すると、通報者が出迎えた。
明らかに寝不足に陥っているようで、
気の毒なことに目の下にはクマができている。
早い決着を実現させるため、まずは話を伺った。
その声はどの辺から聞こえるのかなどを聞き取り、慎重な捜索がはじまった。
(おまえは一体どこにいるんだ……)
タカシ隊員は冷静に、獣が通ったと思われる形跡を捜した。
するとユウシ隊員が自分を呼ぶ声がする。
「ここを見てください! 床下通気口の隙間です!
この大きさなら十分にネズミやイタチが侵入できます。
おそらくここから侵入して、
天井裏で鳴いているのではないでしょうか?」
(そうだろうか──)そう、タカシ隊員は思っていた。
たしかに、侵入可能な隙間はある。
が、獣が侵入したような足跡・爪痕といった形跡や、
汚れの類がまったく着いていないのだ。
この段階で答えを出すのは早計だ。
「ここもひとつの案として、
鳴き声がするという部屋の捜索をしよう」
そうユウシ隊員を促し部屋の方へと向かった。
さらにその天井裏へ──。
「おい、ユウシ。
何か形跡や痕跡は確認できたか?」
「いえ、こちらはまだ何も……」
自分のほうもそうだ。たとえネズミ1匹であっても、
こんなに形跡や痕跡を残さずに生息できるはずはない。
(どういうことだ……。なんの手がかりも見つからないなんて)
タカシ隊員は、いつになく焦りを覚えていた。
形跡や痕跡はきっちりと見つけることができる。
しかし、それを残していないものの捜索は、
推理との勝負になる。
相手は誰なんだ──。
その時、依頼人が慌てたようにこう告げる。
「タカシ隊員! 今!! 今、鳴き声がしました!」
タカシ隊員は訝しんだ。
(鳴いた!? 我々が天井裏にいるのに、
無防備に鳴き声を出すなんてあり得ないが)
2人は天井裏の捜索を中断し、
依頼人のいる部屋へと戻ったのだ。
鳴き声の正体は一体なんなのか。
タカシ隊員の閃きで判明したものとは
その時、事態は動き出すのだった。
「キキッ」
その声はたしかに聞こえたのだ。
依頼人はタカシ隊員と目が合うと
(この声ですぞ)
と言わんばかりに頷いて合図を送ってきた。
この部屋にあるのは、
キッチン・ガスコンロ・テレビ・本棚・机、
そして家庭用火災報知器・照明器具などだ。
ここのどこに身を潜めているというのだ。
「キキッ」
再びその声は聞こえた。
(いや、待てよ。これは鳴き声ではないぞ)
タカシ隊員は、その音が獣の鳴き声とは違うのではないかと推測した。
そして音がした方へと前進してみた。
「キキッ」
定期的にその音は聞こえ、遂にタカシ隊員はその音の主を見抜いたのだ。
「わかりました、その音の犯人が」
自信満々の笑みを浮かべたタカシ隊員は、
ユウシ隊員と依頼人の顔を交互に見ながらそう言った。
「その犯人とは、これです」
タカシ隊員は、壁に掛けてある家庭用火災報知器を指さした。
「お客様、そしてユウシ、よく聞いてください。
もうちょっとしたら“キキッ”、いえ、
“ピピッ”という音がなるはずです。
しかしその音は力が入っていないため
“キキッ”と聞こえるかも知れません」
説明を聞く2人は驚いているようだ。
「キキッ」
その音を聞いた依頼人は、
「きゃ! 本当に鳴ったわ、この火災報知器から!」
つまり、10年以上が経過した火災報知器であるため、
電子部品の劣化や電池消耗などにより誤作動などが起きていたのだ。
「こんなことでお呼びして……申し訳ありません。
私てっきり何かの獣かと……。
でも、来ていただいて原因もわかりましたし、
本当に安心できました、ありがとうございました」
そう、恐縮しながら頭を下げるご依頼人。
「いえいえ、大事にならなくて本当によかったです。
もしまたお困り事などがありましたら、
ぜひ我々を頼ってください」
タカシ隊員はそう告げて、お宅を後にしたのだった。
(今日の調査は大変だったが、これもご縁。
解決できたことを喜ぼう)
そう思っているタカシ隊員に、新人・ユウシ隊員が、
「お疲れ様でした! コーヒーでもどうですか?」
と缶コーヒーを差し出した。
食後より味わい深い、癒やしのひとときとなったのである。
今回の結果は「火災報知器の誤作動」によるもので、通報者が訴えたように獣の侵入ではなかった。しかしこれも無料で対応している。なので皆さんも安心してペストバスターズを頼ってほしい。

敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。