第29話 どんな現場でも全力を尽くすのみ!若手隊員との絆物語

鳩は1年中出没する身近な害鳥。
被害はやはり衛生に影響のある「糞」

クルック〜、クルック〜
クルック〜、クルック〜

鳩の鳴き声である。

 

鳩といえば、年がら年中、そこら中にいる印象が強いが、
それはまったくもって正解。

年3〜4回の繁殖期が中心だが、
年7〜8回の繁殖も可能だというバイタリティ。
そりゃあ、しょっちゅう鳩に出くわすわけだ。

よって、真冬の時期であっても防鳩対策の依頼は多い。
ベランダ・軒下・太陽光パネル……。
寒さを凌げる場所を巣に、彼らは常に我々の生活圏にいる害鳥だ。

「タカシ隊員、今日も鳩被害に困る方から一報が入りました!」

今日の現場は、依頼主宅のベランダだ。
少し前から鳩が飛来していたが、
しばらく放置していると尋常ではないほどの糞害となり、
もはや足の踏み場もない状況になってしまったという。

そうした現場に何度も足を運んだことのあるタカシ隊員だが、
問題となっているベランダを見た瞬間、
鳥肌が立つ思いがした。

(何と!! これはひどい……。
糞害で床面がまったく見えないではないか)

言葉を失っているタカシ隊員に依頼主も声をかける。

「結構ひどい状態なんですよ……、できますか?」

「も、もちろんです! どうぞご安心ください」

と力強く言ったタカシ隊員だが、
内心(まるでホラー映画のような惨状だ)
と思ったとか思わなかったとか。

──いや、それぐらいひどい現場でも、
ペストバスターズの手にかかればお手のもんだ。

「まずは床面を清掃し、殺菌消毒します。
そしてこのベランダに鳩が飛来して来ないように
防鳩ネットを取り付けることで解決します」

「防鳩ネットは、今日、できるんですか?」

「今日取り付けたいところではありますが、
隙間があっては意味がありません。
そのお宅に合った寸法のものを取り付けてこそ、
鳩をベランダ内へ侵入させない効果が得られますので、
今日は寸法を測り、それを基にオーダーメイドします」

「そうですか!
これで鳩に悩まされなくなるなら
ぜひお願いしたいです」

 

鳩被害は年がら年中発生する。
だからこそ、若手隊員に教えたい

「今日の現場、キツいッスね〜。
俺、糞清掃の依頼が一番キショいッス」

キショい……若者がよく口にする言葉で、
「気色悪い」のこと。
若いユウシ隊員は、鳩の糞害清掃をしながら、
無邪気にそう感想を口にする。

そんな時、ベテラン・タカシ隊員は決まってこう諭す。

「キショいなんて言うなって〜。
確かに糞は“うんこ”だ。
そう考えたら“キショい”よなあ。
でもな、そのうんこが運をくれるんよ」

「どういうことッスか?」

「考えてみろ、ユウシ。
そのキショいもののお陰で、
俺たちに出番がまわってくる。
だから俺はいつも、
糞清掃は有り難く思って仕事しよるばい」

「なるほど……糞も返せば金(きん)になるッスか!」

「頑張ったらご褒美買っちゃるからな」

「うお〜!やったりまっせ!
俺がキレイにしちゃる〜」

 

正直なところ、ペストバスターズの業務といえば、
「危険」「汚い」「怖い」という現場ばかりだ。

それを知って志願する若者など、そうそういるはずもなく、
しかしながら大切な任務であることには変わらない。

それを踏まえて志願したタカシ隊員は、
この任務にあたる心意気が長けている。
だからこそ、若い体力のある人たちにわかってほしいのだ。

この業務が、どれだけ人に感謝をされる大事なものなのかを。

現場での知識とやり方を教えるだけではなく、
ベテラン隊員として、この道を行く者としての
誇りと心得も教えたい。

そんな思いで現場に若手隊員を引き連れ、
都度、諭す言葉をかけるのだ。

とはいえ──若者に疎ましく思われないような軽妙な物言いで。

 

困った人の笑顔が最高のご褒美
そして、ミッション達成後もまたご褒美

「おかげさまで、鳩の被害から解放されました。
ベランダを見るだけで寒気がするほどでしたが、
消毒をしていただいたおかげで気持ちよく使えます」

「そう言っていただけてなによりです」

依頼主からの感謝の言葉をいただき、
タカシ・ユウシ両隊員は現場を落着させた。

 

「ユウシ、おまえ今日はよく頑張った!」

そう声をかけるタカシ隊員に対し、ユウシ隊員も

「いやいや、タカシ隊員も頑張ったッス!」

(コノヤロー(笑)、おまえが言うな!)

と、心の中で思うタカシ隊員であったが、
汗を流して一生懸命に清掃作業をしていたユウシ隊員の横顔に、
頼もしさも感じていた。

「よし! ラーメン奢っちゃるけん!」

「えぇ〜……あんなに頑張ったのに
ご褒美って、ラーメンッスか〜?」

「なんば言いよっとか!
ラーメン・チャーハン・餃子の3点セット食えばよか!」

「あざッス!
ラーメン・チャーハン・餃子の3点セットがよかッス」

「よし! じゃあ帰って片付けをして、
すぐにラーメン屋に行くばい!」

「よっしゃ〜!!」

 

ラーメン・チャーハン・餃子の3点セットは紛れもなくご褒美だ。
しかしふたりにとって、依頼主が笑顔で喜びの言葉を口にされ、
「やり遂げたのだ」と思う瞬間が何よりのご褒美なのだ。

この充実した気分の中ですするラーメンの味は、
ふたりの絆をより深いものにするのだった。

美味しそうに、一心不乱に麺をすする
ユウシ隊員の横顔をチラリと見ながら
タカシ隊員はこう思うのだった。

(ユウシ、今日も過酷な現場をありがとうな)

 

そんな友情と責任とやり甲斐を携えて、
ペストバスターズは今日もゆく!

 

敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。

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