前回のコラムでは、ペストバスターズ・タ〜隊員がプロとしての任務でゴキブリ被害の対応にあたるため、2年に亘るゴキブリとの共同生活の末、独自の攻略法を編み出したという話をした。
そのタ〜隊員、実は同じようにネズミ被害にも積極的な攻撃ができるよう、ほぼ同時期にネズミも自宅でペットにしていたことが明らかになった。
なんとも愚直で研究熱心な男である。いや、漢である。
──ということで前回同様、その一部始終と研究結果に迫る!
目次
タ〜隊員は、再び思い立つ
「そうだ ネズミ、飼おう。」
ゴキブリ駆除に四苦八苦していた新米時代のタ〜隊員、完璧な仕事をするためにはと考えた末、ゴキブリを飼うことで生態から学ぶぼうと思い立った。
今回の話は、自宅ですでに600匹のゴキブリと一緒に暮らしていたある日のこと。
ペストバスターズの仕事とは、ゴキブリ駆除の限りではない。被害依頼件数の多さでいえば、ネズミも上位に上がる害獣だ。
しかしネズミにも種類があるため、エサとする対象物によって被害も変わってくる。その詳細は後述するが、その種類と被害の関係性すらわからなかった新米時代のタ〜隊員は、ネズミも捕獲してきて自宅で飼うことにしたのだ。
「ゴキブリたちがいなくなる2ヶ月ほど前からネズミも飼い始めました。ネズミは総勢15匹いましたね。ええ、家族が一気に増えましたので賑やかでしたよ(笑)」
ネズミは、被害に遭ったお宅の状態に合わせて、
◯畑の作物を主に食い荒らして困る「ハツカネズミ」
◯天井裏に棲み着いて不快な音を立てる「クマネズミ」
を捕獲して連れ帰ってきた。
その捕獲期間は2ヶ月半を要し、1週間に1度のペースで捕獲器をチェックに行ったというから頭が下がる。
ゴキブリの時と同様に、ハツカネズミには自宅1階で倉庫として使っていた3畳半の部屋を与えることにした。床下を450mm✕450mmサイズでくり抜き、「点検口」のようなイメージで鉄製の物で造作した。また、その中には、木材で束柱に見立てた物・横木に見立てた物も配置したほか、通電していない配線コードを入れ「どれだけ噛じるのか」を実験した。
一方クマネズミは、すでに自宅の天井裏にいることを知っていたため、駆除せずそのままにした。
天井裏の造作はこうだ。ホームセンターで塩ビのパイプを買ってきて数か所の穴から侵入できるようにしたという。イメージしてほしいのは「雨樋」。塩ビと呼ばれるプラスチック状のパイプで、排水の角度が変えられるようにL型の中継素材をつなぐことができるような仕組みになっている。
タ〜隊員は、その塩ビのパイプを左右につないで侵入の可能性を高め、最終的に4箇所のブリキのボックスにお菓子などを入れて誘導するように仕掛けた。
当然ながら、塩ビのパイプに侵入したはいいが、出ることも自由であれば意味がない。よって、配管内から後戻りできないように「逆止弁」も手作りした。

タ〜隊員のネズミ観察記。
食べ物の好みがまったく違う上、臭いがまったく違う!
まず気になるのは、種類による生態だ。
ハツカネズミはどんな物を食べ、クマネズミはどんな物を食べるのか。それにより被害のイメージもつきやすくなる。
「ハツカネズミが食べるのは、米粒と大豆ですね。炊いたものではありません、硬いままのものをあげていました。クマネズミは雑食でした。人間の食べ残しやお菓子のカスなどもよく食べました」
これにより、ハツカネズミは田んぼや畑などの穀類を目的に現れることがわかる。一方クマネズミは、人間が食べている物を目当てに、深夜の台所に現れてもおかしくはない。姿形が気持ち悪いということだけではなく、病原菌を持っていることからも害獣として駆除することが必須になる。
このように食べ物の好みが違うということは、体臭も違うであろうことがイメージできるが、一体どんな臭いがするのだろう。
「ハツカネズミは、そこまで臭いニオイはしませんでした。ただ、怯えたりするとアドレナリンが分泌する影響なのか、ハムスターのような獣臭を感じましたが、そこまで嫌なニオイではありません。
クマネズミは・・・鼻が曲がるような臭さです。納豆に腐った油を混ぜたとでもいうのか・・・油っぽい腐敗臭ですね。できれば嗅ぎたくありません」
突き進んで聞いてみると、ハツカネズミは体が小さいからか集団(2〜3匹が多そう)で行動するのに対し、クマネズミは単独行動をするが、メスは子育ての関係からか餌場に近いところに留まり、オスは行動範囲が広く活動的だという。
また、「ネズミが噛った後」から判断できることとして、体の小さなハツカネズミは歯型も小さく粉状の残物があり、体の大きなクマネズミは噛った歯型も大きいという。

ペストバスターズが他社にない仕事ができる理由!
「ごめんなさい、これは企業秘密にさせてください」
一般的に、ゴキブリやネズミといえば嫌悪すべき害虫獣の代表だ。
その、人が嫌がる害虫獣を「ペット」にしてまで学ぼうとしたタ〜隊員だからこそ、誰も知り得ない「機密情報」を持っていてもおかしくはない。
今回の取材の中でタ〜隊員は、こんなことを口にしているのだ。
「ネズミの赤ちゃんって、みんな同じ『ネズミの顔』なんですよね。図鑑やネットでは、『クマネズミは耳が大きく、耳を倒すと目にかかる』なんて書いてあったりしますけど、子どもの時はそれが当てはまらない。だから生まれたての子を見ただけでは、ハツカネズミなのかクマネズミなのかの判別がわかりにくいんです」
だとしたら、罠を仕掛けて捕獲する際、米粒などの雑穀を用意したらいいのか、残飯などを用意したらいいかわからなくなるのでは?と考えた筆者は、無邪気な気持ちで質問してみた。
すると、これまで軽快に話してくれていたタ〜隊員が、急に言い淀む。
「実は・・・飼ってみて初めて、ある特徴を見つけたんです。これはいくらネット検索をしても出てきません。だから、秘密にさせていただきたいんです」
そう言われれば、企業秘密を優先してあげざるを得ない。
──が、厚かましい筆者は「記事にしないのでこっそり教えて〜」と迫り、重い口をこじ開けることに成功した!
約束通りここに書くことはできないのだが・・・なんとすごい発見をしたものだと、聞いた瞬間小躍りした!
「それ、行動にも関係する大発見じゃないですか!!
種類による行動が予測できれば、捕獲の正確性も高まる! まさにペストバスターズにしかできない仕事ができているのは、そういう研究の賜物だったんですね!!!」
個人的に、タ〜隊員にノーベルなんちゃら賞を授けたいぐらい、共に生活をしたからこそ知り得た情報であることに脱帽した。

ここまでする!!!!!?????
結末は「餓死するまでを観察」
もう・・・この見出しだけで心が重くなることと思うが、タ〜隊員は遊びで害虫獣をペットにしているわけではない。世の中の被害に苦しむ人のためになることを目的に、嫌な役を買って出てくれている正義の人物だ。
また、筆者も何度も話しているが、笑顔を絶やさず穏やかな口調で、心の優しい人物だ(若干見た目はイカツイが笑)。
それだけは誤解なきよう、前置きしておきたい。
1年10ヶ月に亘り一緒に暮らしてきた、ハツカネズミ・クマネズミは、最後は餓死に追いやったという。決してネズミたちが憎かった訳でもないし、餌やりが面倒臭くなった訳でもない。これは紛れもなく動物実験なのだ。
ある日、最後の晩餐を期にピタリと給食を止めた。何日で死に至るのかを知りたかったのだ。その理由は、被害に遭っているお宅に罠を仕掛けた際、何日後に様子を見に行くべきかを知るためだ。
死んだ状態をそのままにしては、今度は害虫の大量発生のほか、腐敗による健康被害へと影響しかねないからだ。
体の小さいハツカネズミは、3日目に1匹が死んだ。それ以外は4〜5日目にバタバタと死んで、最後の1匹まですべてが餓死した。
体の大きなクマネズミは、餓死するまでに1週間近く経過しただけではなく、子を食べて生き延びようとした者もいた。これが生態を裏打ちするものではないが、今回の観察ではそのようなことが起こったという。
このことから、ハツカネズミは早めに回収に行く必要があり、クマネズミはある程度日数が空いてからの回収でも大丈夫であることもわかった。
餓死したネズミたちは埋葬したという。そこまでは聞いていないが、タ〜隊員のことだ、埋葬したネズミの死骸に手も合わせたことだろう。そこまで嫌な思いをしてでも貫き通したい任務が、ペスターズなのだ。
「ゴキブリに続いてネズミをペットにする、それを聞いた奥様はなんて仰ってましたか?」
「『お好きなように(笑)』と言ってましたよ、呆れてるんでしょう(笑)」
旦那様の性格を知り尽くした奥様だからこそ、つべこべ言わず一言で返された粋さ。そして照れ隠しで「呆れているんでしょう」と答えたタ〜隊員。この二人の心意気があってこそ守られる平和があることに、個人的に感謝したい気持ちでいっぱいだ。
敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。