第26話 それやっちゃダメ! プロが教える対処法⑤ 寒い冬の季節、気をつけるべきは風邪、インフルエンザ、そして「ノロウイルス」

11月上旬まで夏日を記録するなど衣替えの時期に困った今年ですが、急に真冬の寒さが訪れるなど、例年以上に体調管理に注意が必要となりました。その寒い時期に猛威を振るうのが「ノロウイルス」。

ということで今回は、衛生検査センターの臨床検査技師・清川俊彦先生にお伺いし、ノロウイルスについてお勉強してみたいと思います。

ちなみに衛生検査センターとは、ペストバスターズらが所属する施設の検査部門で、主に調理に従事する企業から依頼を受け、腸内細菌を検査しています。

それでは早速、検体検査のスペシャリスト・清川先生にご登場いただきましょう。

 

ノロウイルスの時期は10月〜3月。
そもそもノロウイルスって何!?

── 最初にお伺いしたいのですが、衛生検査センターではどんなものを調べるために検査が行われているのですか?

清川 はい、衛生検査センターで調べる対象は4つです。
①赤痢菌 ②サルモネラ属菌 ③病原性大腸菌 ④ノロウイルス

これらは、主に人の手から食品を媒介して感染するのですが、給食センターや食品を扱う企業の従業員は、この検便によりリスクが判明できます。

── ちょっとお伺いしたいのですが、最初の3つは「菌」と名がついているのに対し、最後は「ウイルス」となっています。

菌とウイルスでは何が違うのでしょうか?

清川 いい質問ですね! では簡単に説明しましょう。菌もウイルスも「病原微生物」というカテゴリーに属しているんですが、まず大きさが違います。

ウイルス → クラミジア → リケッチア → マイコプラズマ → 細菌

(小) → (大)

これが基本的な考え方ですが、数ある種類の中にはこれに該当しないものも存在しているのが事実です。

それから、「菌」は食中毒に代表されるように、食べ物の中で黄色ブドウ球菌やサルモネラ菌などさまざまな菌がどんどん増えて腐っていきます。つまり水と栄養があれば、自分の力だけで細胞分裂して増殖していくことができるのが菌です。

一方ウイルスは、自分の力だけで増殖することはできません。人や動物の体内に入り、付着したところで増殖していく性質があります。なので、風邪のウイルスが喉から侵入した場合は、喉で増殖して全身症状を引き起こすんですよ。

── なるほど! 基本的にウイルスは小さいので、風邪やインフルエンザなどが空気感染するということですね。

 

それやっちゃダメ!?
ノロウイルスにアルコール消毒

── そんなノロウイルスですが、感染経路はどんなことが考えられますか?

清川 こちらも代表的なものは、経口感染。つまり食べ物など口から体内に侵入するといわれています。

ノロウイルスに感染した方が体調を崩し、嘔吐や下痢の症状を引き起こす。この時の手指の消毒が不十分な場合、ノロウイルスが手指に付着した状態で調理をすることになり、料理を通じて体内に侵入してしまうのです。

重要なのは消毒石鹸と流水で洗い流すことなのです。

── でも、料理の工程で十分加熱すれば、ウイルスは死滅するんじゃないでしょうか。

清川 そうですね、基本的にウイルスは熱に弱く、加熱処理をすれば死活化できるとされています。

が、ノロウイルスの怖いところは、乾燥にも強く、長期生存が可能。非常に感染力が強いという特徴を持ちます。

── それなら、コロナ対策の時のように、調理前にはアルコール消毒をすれば防げますか?

清川 残念ながら、ノロウイルスにはアルコール消毒がほぼ効かないんです。

── えぇ!? アルコール消毒が効かないなんてこと、あるんですか?

清川 ちょっと難しい話をしますが、ウイルスにも2つのタイプが存在します。外膜を持つ「エンベロープウイルス」と外膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」です。

この外膜とはほぼ脂質でできているので、アルコールで破壊することができますが、ノロウイルスはこの外膜を持たないタイプ。アルコール消毒剤に対して抵抗性があるといわれ厄介者なんです。

①外膜を持つ「エンベロープウイルス」・・・インフルエンザ、ヘルペスなど
②外膜を持たない「ノンエンベロープウイルス」・・・ノロ、アデノなど

── では、どうやって消毒したらいいのでしょうか。

清川 そこで登場するのが「塩素系」の消毒薬です。有名なのは「次亜塩素酸ナトリウム」と呼ばれるもので、ドラッグストアなどでも購入することができます。

家庭にある漂白剤などもこれにあたりますので、まな板の消毒などには有効。しかしアルコール消毒のように、手指消毒に使うことはあまりないので、そこをご注意ください。

 

培養検査とPCR検査の違いは?
衛生検査センターでPCRはできないの?

── 現在、衛生検査センターで行われている3つの菌には培養検査が行われていますよね? コロナウイルスの時に初めて知った「PCR検査」とはどう違うのですか?

清川 これは深い質問に入ってきましたね(笑)。それではまず、培養検査とは何かをご説明しましょう。

先に挙げた菌やウイルスは、“環境”が整うことで増殖していきます。それを時間の経過で判別するという手法です。

菌によって増殖のスピードが異なりますから、発症にもずいぶん差があるんです。
たとえば

【発症時間】 ※主なもの一部記載
◯黄色ブドウ球菌・・・平均3時間
◯サルモネラ菌・・・・平均8〜48時間
◯赤痢菌・・・・・・・1〜7日(通常4日以内)
◯ノロウイルス・・・・1〜2日
◯腸管出血性大腸菌・・3〜5日

よって、培養検査でも個々の検便を検査薬に移し、観察する必要がありますので、ある程度の時間を要するというものですね。

一方でPCR検査は、短時間で検査結果を出すことができます。

── コロナのPCR検査では、病院なら20分ほどで結果が出ました。早く結果が出るほうが当然いいことしかないように思うのですが。

清川 もちろん、検査結果を迅速に出すことは、私たち臨床検査技師にとって使命だと思いますし、私個人としてもそれを信条としてやってきました。

検査結果の迅速化を考えると、今後はPCR検査の導入ということも視野にお客様の要望に沿う形は検討していきたいと考えています。

── 今回は、“名前は知っているけど良くわからなかった”、菌とウイルスの違い、そして培養検査とPCR検査の結果を学ぶことができました。

 

おさらいすると、「やっちゃダメ」なのは
◆ノロウイルスに感染した方の「吐瀉物」などの処理後は、
アルコールでの消毒はダメ。塩素系のものを使用すること
でした。

いずれにしても、まずは手指衛生とうがいを徹底して、菌やウイルスに感染しないように心がけたいと思います。清川先生、ありがとうございました。

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