第10話 絶対に負けられない戦いが、ここにもある。毒針を持つスズメバチの猛攻を撃破せよ

「ベスパ・ウォーズ」出動‼

ちなみに「ベスパ」とは
大型のスズメバチ類をあらわす学名(属)。
つまり「ベスパ・ウォーズ」とは、
機動戦士(駆除する隊員)のため開発された
戦闘服(防護服)から生まれた言葉だ。

 

敵強し! 負傷者を出す苦しい戦い

「うぐぅ……、や、やられましたー……」

額には玉のような脂汗をびっしりとかき、
顔をしかめて激痛に耐える隊員の姿があった。

ペストバスターズの中でも、
スズメバチとの戦闘に長けた精鋭たちが
「ベスパ・ウォーズ」に出動する。

「やばいぞ! 呼吸が浅い!
救急搬送……救急車を呼んでくれ!!」

着流しに丸腰での敵陣偵察──つまり、
防護服を着ず、撃退用の武器を持たずして
乗り込んだが故に
スズメバチの来襲に遭ったのだ。

じゃあなぜ着ていなかったのか。

それは、敵陣を偵察に行く際には、
防護服が邪魔になる。

どんなに軽い素材のものであっても2キロ、
使用時期は初夏というサウナ状態、
視界が狭く身動きが取りづらい
という点が敵陣の偵察に影響を及ぼすからだ。

 

そしてアナフィラキシーショック。
刺されてみなければ、
または2度3度刺されてみなければ
自分自身の体がハチに対して
アレルギーがあるのかどうかわからないという。

 

ちなみにアナフィラキシーショックの主な症状とは、
皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状に大別される。
重症の場合は数分以内に
呼吸器症状または循環器症状によって
命を落とすこともある。

 

とはいえ、ハチも必死だ。

巣に危害が及びそうだと察知すると、
「この野郎〜〜〜〜!!!!!」
とばかりに激昂。

パッと来てパッと刺す程度では収まらず、
大アゴで噛みつき
自分の体が離れないように6本の足を固定して、
持ち合わせている左右の針を交互に
高速でめった刺しにしてくるという。

 

キイロスズメバチとの戦いは、
こうした危険と背中合わせの中
決死の攻防戦が行われているのである。

 

敵城へ、いざ襲撃!!!

その日──。

ベスパ・ウォーズに乗り出した佐藤隊長は、
仲間の隊員を引き連れて
とある民家の小屋の“梁”に作られた巣と
そこに生息する無数のキイロスズメバチとの対戦に備えていた。

お盆時期の灼熱の太陽が降り注ぐ昼下がり。
鎧のごとく、白い防護服を装着した隊員たちが、
一歩、また一歩と敵陣へと忍び寄る。

夜でも見張りを立てるほど慎重なキイロスズメバチは、
前日から行動範囲広く出かけていた者が帰還するなど、
出入りが激しいのも周知の上だ。

寝込みを襲う、という奇襲はない。

「キイロスズメバチの巣、間違いありません!」

仲間の隊員の確認の声を受け、
佐藤隊長は「よし!突撃〜!!」と号令をかけた。

「うおぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!!」

それはまるで、
戦国時代に敵城を攻め入るが如く
素早く巣の出入口を塞ぎにかかった。

「よし!エアガンだ!」

エアガンとはガス銃のことで、
巣に穴を開けエアゾールを噴射した。

 

戻りバチの返り討ち!! どうする隊員たち

城の襲撃に、出払っていたキイロスズメバチが
鉄砲玉のように次々と飛来。

隊員めがけて体当たりの猛攻をみせる。

戦闘時の飛行速度は、
時速40キロを超えることもあるという。

「うわっ!!!!!」

体当たりを受けた隊員のひとりがよろめいた。

「大丈夫か!!」

「大丈夫です!
あたりは強かったですが
刺されてはいません!」

 

この空中戦には、ある武器が功を奏する。

バドミントンのラケットだ。

相手も平均時速30キロ近くでむかってくる。
それをラケットで殴打し撃退する。

佐藤隊長が仲間の頭上付近で、
不敵な笑みを浮かべているかのような
キイロスズメバチがホバーリングしているのが見えた。

「上だ〜!!! 上から来るぞ〜!」

その声に、仲間の隊員は
武器をラケットから持ち替え、
ネズミに使用する粘着板を振り回した。

「おりゃあああああああああ!!!」

見事ハチは粘着板に貼り付き、
身動きが取れない状態でバタついている。

 

こうして、巣を陥落させ、
戻りバチとの斬り合いの末、勝利した。

 

佐藤隊長は、兜を脱ぐように
防護服から顔を出し汗を拭う。

仲間の隊員が冷たいペットボトルの水をさしだした。

「お疲れさまでした」

 

この安堵の瞬間が、佐藤隊長の至福の時だ。

「住民の方が無事だったこと。
これが何よりなんだよなあ」

 

敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。

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