第5話 5月は「五月蝿い(うるさい)」!? 家の中で“アレ”が大量発生!!

コバエがウジャウジャで視界が真っ黒!

「あれ? タ〜隊員じゃなかったのかい?」

依頼のあったお宅へ到着すると、
家主の奥様が出迎え、そう言った。

「タ〜隊員がご指名でしたか?」

「いやいや、そうじゃないんだけどさ、
うちにネズミが出た時にいい仕事してくれたんだよ。
『この臭いはクマネズミだ!』
な〜んて言っちゃってさ(笑)」

「だからてっきり、
タ〜隊員が来てくれるんだとばかり
思い込んだわけ。
で、あんた名前はなんて言うの?」

「同じく隊員のゾノと申します」

「ゾノ隊員ね。
今回はねえ、裏の納屋に
大量にコバエが発生しちゃって困ってんのよ。
食べ物なんかなんにもないのにさあ」

その情報をもとに、ゾノ隊員はコバエが発生しているという
裏の納屋の扉を開けてみた。

確かに──

視界が真っ黒く見えるほど、無数の“コバエ”が飛んでいる。
これはすごい数だ。

「口の中に入りそうだから気味悪い、ゲホッゲホッ。
薬局で売ってる『コバエがホホホイ』っていう、
虫取り器買って置いてもダメ、追いつかないんだよ」

「これ、どっかからわいたんだね」

そう推測する奥様に、ゾノ隊員は優しく解説する。

「実は、コバエの類って、
自然発生はしないんですよ。
外からやってきているものと、
内で発生するものと見極めが必要なんです。

ちなみに『コバエ』という種類は存在しなくて、
何千種類もいるものの総称のようなもの。

なので、どの種類が発生しているかによって、
原因や駆除の方法が変わってくるんです。

植木などにつくのはキノコバエですし、
ここにいるのは、そうですねえ……」

そう言いながら、ゾノ隊員はコバエを捕まえてみた。

(なるほど「ショウジョウバエ」だ)

「奥様、今発生している“コバエ”とは、
ショウジョウバエといわれるものです。
このショウジョウバエは、
よくキッチンの三角コーナー、
つまり生ゴミを好む種類です」

それにすかさず反論するのは奥様。

「そう言ってもさあ、ここで料理なんかしないもの」

「では私は、その原因となるものを突き止めてみます」

「原因!? なんか殺虫剤みたいなので
シュ〜ッとやって一気に退治できないのかい?」

これは現場でよく言われることだった。
誰もがみな、薬を撒けば解決すると思っている。

しかしこの「ハエ」や「蚊」の類ほど
難しいものはない。

原因を断つことこそがすべてなのだ。
そうでなければ、
やつらの鋭い嗅覚でまたすぐにでも飛来してくる。

 

ショウジョウバエの大好物を捜せ!

大発生しているのはショウジョウバエだった。
このショウジョウバエは、コバエの中でも一般的なもので、
そのほかには、
お風呂場などパイプのぬめりを好物とするチョウバエ、
それと同じようなものを好むノミバエ、
観葉植物など土の栄養を好むキノコバエ
などが挙げられる。

とにかく今お客様を困らせているのはショウジョウバエだ。
必ずどこかにやつらが好む、原因となるものがある。
それはほぼ間違いなく生ゴミがあるはずだ。

そう踏んだゾノ隊員は、
目の前を大群で飛び交う納屋の中で
原因となるものを捜索するのであった。

「奥様、ありました。おそらくこれです」

ゾノ隊員は、納屋の隅に置かれている、
小さなビニール袋を指差した。

「ああ〜!それかい!
土の肥料にしようと思って、
卵の殻を取っておいたんだよ」

「はい、この臭いを嗅ぎつけたショウジョウバエは、
一気にここに群がって
このような状態になったと思われます」

その原因が見つかったところで、一旦それを取り除き、
ゾノ隊員は倉庫内に殺虫力のある炭酸ガスを噴霧した。

 

ハエにはハエの「好み」がある

「ああ〜よかった!お陰で1匹もいなくなったから、
やっとまともに息が吸えるよ(笑)」

真っ黒く見えていた倉庫内は、一気に視界が晴れ、
見渡せる状態になった。

するとそこへ、扉が大きく開けていた入口から
一匹の大きな「ハエ」が入ってきた。

「やだ! せっかく……ショウジョウバエだっけ!?
いなくなったと思ったら、
今度はおっきなハエが入っちゃったよ!
やめておくれよ、
ここで卵産んだらまた大変なことに……」

「ははははは、大丈夫ですよ!
ショウジョウバエと同じく、
イエバエも原因がなければ、
ここで繁殖はしませんから。
ただ入ってくるだけ。
ここで扉を締めてしまっても、
中で死んで終わりです」

「本当かい〜!?
ここで増えたりしない?」

「はい、しませんよ
発生する原因がなければ(笑)」

例え一匹、紛れ込んで入ってきた虫がいたとしても。
やつらだって「好み」がある。
何も好き好んでここに来たわけではなく
「たまたま来ちゃった」ということだってあるのだ。

ハエからしてみれば、外の方がたくさんの餌がある。
動物のフンや死骸のほうがよっぽど“美味しい”。

「あんたハエに詳しいね! ハエ博士だね!
じゃあさ、これは……」

奥様は納屋の外に促した。

 

蚊は吸血のものだけではない

納屋の脇に出ると、そこには古いタイヤが積まれており、
雨水が溜まったところに数匹の蚊が飛んでいた。

「気をつけなよ、刺されちまうからね」

「ああ、これですか。
この蚊は『ユスリカ』といって
人の血を吸ったりはしませんよ」

「そうなのかい!? 蚊なのに?」

蚊と呼ばれるものにも種類があって、
吸血のものは白と黒の縞模様をしている
「ヒトスジシマカ」というもの。
よく「ヤブ蚊」ともいわれている。

「このユスリカはお水が大好きなんでね、
このタイヤに溜まったお水がなくなれば
ここにやってきたりはしませんよ」

「今日は勉強になったわ〜!
嫌だけど、ハエや蚊の好みがわかれば
うちに来ないってわけだね」

ハエや蚊の嗅覚は研ぎ澄まされている。
その臭いをさせない、
すなわち餌となるものをなくすことで解決に至る。

「ゾノ隊員、あんたの家でも
ハエや蚊は出るだろう?
その時は『コノヤロウ』って思うのかい!?(笑)」

「思いませんね(笑)
自然の中にいるものだと思っているので、
困ることがない限り
うまく共存できればいいと思っています」

「さすが、その道のプロともなれば
悟りを開いてるねえ(笑)」

 

敵はいつまた、やってくるかわからない。
これからも見守りは続く。

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