第12話 【ペストバスターズ番外篇】頑張れ!ガンちゃんシリーズ①「家に帰って悔し泣く!! 癒やしてくれるのは猫とにわとり」

はじめまして!
新米隊員・ガンちゃんです!!

「これが隊員服なんスね〜、カッコいいッス!」

1年半前、ガンちゃんは
ペストバスターズを志願してこの基地にやってきた。

「ああ、よく似合ってるよ。
じゃあ早速現場へ行くけど、準備はいいか?」

「はい! 頑張るッス!」

 

こうしてガンちゃんは、先輩隊員たちに連れられて、
恐怖に慄く住民たちを助けに、出動する日々がスタートした。

 

ガンちゃんの前職は、というと──

「俺、林業だったッス。ひとり親方ッス。
でもある時不安になったんスよね〜。
この過酷な肉体労働で、40歳、50歳まで
ひとり親方でやっていけるんかなあ〜って。
それで俺、生き物が好きだったんで、
ペストバスターズを志願したッス」

生き物が好きだから──ガンちゃん、それなら
動物園の飼育員とか、ペットショップのほうが良かったのではないか。

「あはは(笑)
動物愛護のほうだと思ったッスか?
もちろんそっちも好きッスけど、
生き物の気持ちがわかるっちゅ〜ところで、
駆除のほうもいけると思ったッス」

それなら良かった。
「生き物が好き=気持ちがわかる」という構図で志願したガンちゃん。
さぞや新進気鋭として、
すでに若きヒーローになっているのではないか!?

 

「……それが、難しかったッス。
先輩隊員たちはやっぱ凄いッス。
俺にはゴキブリの気持ちがわからなかったッス」

 

依頼主の現場で、ゴキブリの出現を撲滅させるミッション。
ガンちゃんは初心者ながらも
ゴキブリが考えつきそうなルートや隠れ家を想定し、
そこに罠をしかけたことがあったという。

「見事にゴキブリに嘲笑われたッス(涙)
先輩にも怒られたッス。

『おまえ、どこに罠仕掛けてんだ!
ゴキブリだって必死なんだよ!
そんなわかりやすい所にかくれんぼなんかしねえだろ!』

って(涙)」

 

こうして新米隊員・ガンちゃんは、
肩を落として家に帰り、
猫のみ〜ちゃん(当時1歳)のお腹のモフモフに顔を埋めて
ひとり泣く夜が続くのであった。

 

ゴキブリの気持ちを知るには飼うしかないッス!
今日からおまえたちは、俺のペットだ!

頑張り屋のガンちゃんは、
こうなったら徹底的にゴキブリの気持ちを知ろうと画策する。

「よ〜し、いい子だね〜。
こっちへおいで〜」

なんとガンちゃんは、
自宅でゴキブリを“ペット”として飼うことにしたのだ。

1匹……また1匹……。
家にやってくるゴキブリをその都度つかまえ、
ペットたちを集めていった。

最終的にペットたちは

「20匹ぐらいになったッス!
全員、血統書付きの『クロゴキブリ』ッス(笑)
血統書なんかねえか(笑)

狭くちゃ可哀想なんで、大きな水槽に入れてやったッス」

 

待ってくれ──。
水槽とはガラス張り。
20匹のクロゴキブリがうじゃうじゃ蠢く……(吐)
生々しい動きを見ながら食事を……(吐)
ガンちゃん、正気か!?

「な〜に、言ってるんスかあ〜(笑)
ペットッスもん、一緒に生活してるんスから、
ごはんも一緒に食べるッス!」

まさかとは思うが、自分が食べている物と同じメニューを、
その黒い“ペット”に提供しているのではなかろうな。

「21人前、とは言わないッスけど、
まあ、自分の分よりちょっと多めに用意して、
あいつらにもごはんを与えてるッスよ!

けど……うちの隊員が
『ゴキブリは、唐揚げが好きである』
なーんて言ってたッスよね!?

俺の研究では、白飯ッスよ、白飯!
飼い主に似るんスかねぇ〜、アハハ」

軽く先輩のヤマ隊員をディスったような発言が気になるが、
ガンちゃんちのゴキブリは、大盛りごはんをモリモリ食べているようだ。

「せっかくなんで、人間になつくのか、やってみたんスよ。
さすがに『お手!』とかは無理ッスけど、
俺が近づいても隠れなくなったんスよ。
可愛い〜ッス♡」

 

頑張り過ぎなガンちゃん。

自宅には、20匹のクロゴキブリ、猫のみ〜ちゃん、
そしてにわとりのち〜ちゃんという、
総勢23人(!?)家族という大所帯で暮らしているのだ。

 

ゴキブリの気持ちがわかってきたのに!!
それでもわからない「上手な隠れ場所」

「ううう……(泣)、悔しいッス!!!!!」

ある時ガンちゃんは、現場から返ってくるや否や、
悔しさをあらわにした。

どうしたガンちゃん、何があったんだ!

「ある店舗の厨房で
ゴキブリが出て困っているっていう連絡が入ったッス。
俺、すぐ駆けつけたッス。
だって、ゴキブリの隠れそうなところ、
だんだんわかって来たッスもん(泣)

でも、先輩が確認してくれたら……ううう(泣)」

新米隊員・ガンちゃんには、まだ先輩のサポートが入る。
当然、お客様には迷惑がかけられないためということと、
“現場のことは現場で覚えろ”という、
先輩からの愛の特訓でもあるのだ。

「ゴキブリの隠れ場所について先輩から、
『おい!おまえ!
麺を茹でる機械の壁面パネルを外せよ!』
って。

そういう機械類のパネルとか外していいとか、
俺、知らなかったッスもん。

で、で、で、
先輩がドライバーを使ってネジを緩めて外したッス。

そしたら……わぁぁぁぁぁ〜(泣)」

どうやら、調理用の機械の中であっても、
隙間があればゴキブリは入り込むようで、
特に麺を茹でる機械であれば、温かいので尚更居心地がいいのだろう。

「今回は完全に俺の負けッス。
でも次からはドライバー持って、
壊さない程度に中を開けて確認するッス(泣)」

 

今日も悔しい思いをしたガンちゃん。

自宅に帰ると、出迎えてくれるのは愛してやまない、
にわとりのち〜ちゃんだ。

思わず抱き上げ「ち〜ちゃ〜〜ん」と甘えてみるも、
羽で頬を引っ叩かれて、ツレない。

ここはやっぱり、
心優しい猫のみ〜ちゃんに甘えるしかない。

お腹のモフモフに顔を埋めながら、
今宵も悔し涙を流すのだった。

 

こうしてひとつずつ学んでいく
新米隊員・ガンちゃんなのであった。

頑張れ、ガンちゃん。

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