第16話 【ペストバスターズ番外篇】頑張れ!ガンちゃんシリーズ②「モテモテ!? 可愛がられる新人ガンちゃん!! それでも自分の未熟さに、日々、泣く」

「一生懸命さがいい」
上司・メンバーからの高評価

「ちは〜ッス。
自分、検体、持って来たッス」

そういってガンちゃんは、併設する「衛生検査センター」に、
検便検査用の検体を持参した。

「あら〜!
ガンちゃん、はりきってるわねぇ。
早めに出してくれるとこちらも助かるわ!」

そう言って、衛生検査センターのベテラン職員・よーこさんが受け取る。

「じゃ、自分急いでるんで、またっ!」

 

慌ただしく帰っていくガンちゃんに、
受け取ったよーこさんと、職員のいくちゃんは

「今回もガンちゃんが一番乗りでしたね」
「本当に、はつらつとしていて、見ていて気持ちいいわ〜」

などと褒める。
ガンちゃんたちペストバスターズが衛生検査センターに検体を提出するのは、
害虫獣と戦うため、調理場にも足を踏み入れるからだ。

「できることを一生懸命」がモットーのガンちゃんは、
入隊から1年が経つ今でも、学ぶ姿勢を常に持ち続ける青年だ。

 

電話がなると、真っ先に受話器をあげるものガンちゃんだと、
上司の中島も言う。

「はい〜! こちらペストバスターズ!」(※)
(※)便宜上として。実際は社名を名乗る

「はい、はい、……はぃ……、
えぇ〜っと……、はい……」

張り切って電話に出たガンちゃんだが、
お客さまからの問い合わせにすべて答えられるだけの知識はまだない。

「はい……、えぇ〜っと、ちょっとお待ちください」

電話を保留にしたガンちゃんは、上司・中島のもとにやってくる。

「中島さん、お客さまからの問い合わせの電話です」

「おう、どんな問い合わせだ?」

「それがちょっと……駆除の仕方と期間とか、
現場見てないから、自分わかんないッス」

「じゃあ、現場を見させてくださいと、そう言えばいいだろう」

「言ったんスけど……、そんなことはないだろうとお客さまが……」

「あぁ〜、わかった! 俺が代わる」

 

こうした“営業トーク”は経験こそが物を言う。
ペストバスターズになる前は林業だったガンちゃんは、
お客さまとの相対にまだ不慣れなところもある。

が、上司・中島はこう評価する。

「人間誰しも最初からなんでもできる人などいない。
それを尻込みして電話に出ないより、
真っ先に電話に出てお客さまの声を聞くことがどんなに大事か。
もちろん、お客さまにしてみれば、
最初に出た者がスムーズに答えてほしいと思うものだが、
こうして少しずつ経験を積ませていただくことで、
必ずや頼りになる人物になると思う」

 

いつも一生懸命なガンちゃんだが……。
今回も悔しい出来事に遭遇する

その日は、定期的に請け負う大きな調理センターで活動をしていた。
すると馴染みのご担当者がやってきてこういうのだった。

「ここ最近、ゴキブリが出るんだよね〜」

「え!ほんとですか!?
コントロールが上手くいっていたのに、
どこで見かけたッスか?」

「それが……、洗浄室なんだよね」

「洗浄室〜?」

 

調理場のように食べ物がほぼない洗浄室で、なぜゴキブリが?
ガンちゃんの頭の中は「???」でいっぱいになりながらも、
問題の現場に行ってみた。

大きな洗浄機があるこの部屋で、今までゴキブリ騒ぎがあったことはない
まずは薬剤処理を行い様子をみることにした。

後日チェックに訪れると、やはり数匹のゴキブリが捕獲されていた。

(なんでだよ)、憤るガンちゃんであったが、
この薬剤処理を再度行い、様子をみた。

「やっぱりまだゴキブリが出るんだよ〜」

今回も薬剤処理が上手くいかなかったようだ。
困ったガンちゃんは、先輩バスターズに相談し、
一緒に現場を見てもらうことにした。

 

「ガンちゃん、ここだよ」

先輩バスターズが指差すのは、洗浄機からの排水を貯めておく
床に設けられた排水溝だった。

「え!」

ガンちゃんは驚いた。

「なんで! なんで蓋が開いてるんですか〜!!!」

「いいか、ガンちゃん。
思い込みは禁物だ。
この施設は現在、リニューアル工事を行っているだろう?

だから配管などを確認するため、
工事の職人さんも多く出入りしている。
“いつもとは違う”状況が、この施設では起きているんだ。

そうしたことも頭に入れて、
我々は害虫と対峙していかなくちゃいけないよ」

 

未熟さを痛感するガンちゃん。
またしても動物の家族に癒やしてもらう

「ううう……(泣)、ち〜ちゃ〜ん、み〜ちゃ〜ん」

「ポイントの見落とし、
これが俺の足りないところなんだ、ううう……(泣)」

 

現場での仕事は、だいぶできるようになってきた。
少しはお客さまにアドバイスができる自信もついてきた。

しかし、不測の事態に遭遇すると、
途端に思考が追いつかなくなる。

 

まさか、閉まっているはず排水溝の蓋が開いているとは!

その「はず」こそが落とし穴であり、ポイントを見逃す要因となっている。
このことは重々わかっていたことなのに、
またしても先輩にフォローしてもらう形となった。

案の定、その排水溝の蓋を閉めたことで、
頭を悩ませていたゴキブリはパタリと出現しなくなり、
お客さまにはかなり喜ばれたのだが、これは自分の手柄ではない。

 

絶対に次こそ、自分の力で食い止めてやるんだ!!!!!

 

そう力強く決意したガンちゃんであるが、
悔しいものは悔しい。

またしても、にわとりのち〜ちゃんと、猫のみ〜ちゃんを抱っこしながら
癒やしてもらうのだった。

 

「実は今日、新たな保護猫の赤ちゃんを譲り受けることになったッス」

 

“ふたり”の家族では悔しさの癒やしが足りないのか、
もう“ひとり”、家族が増えるようだ。

 

こうしてひとつずつ学んでいく
新米隊員・ガンちゃんなのであった。

頑張れ、ガンちゃん。

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