
「仕事の効率化」が叫ばれて久しいが、単にAIに頼ることだけが正解ではないはずだ。今回お話するのは、「アナログ」で「仕事の効率化」を図る取り組みの中で、「業務内容のクオリティUP」に繋がった事例だ。
このコラムでは再三にわたり、三洋ビル管理という会社は常に従業員を第一に考え、その上でこそお客様により質の高い業務提供ができることを信念に経営していることを紹介してきている。今回のコラムは、その象徴ともいえる取り組みなのではないだろうか。
目次
「司令官」の存在を置くこと。
しかもその司令官は“プロフェッショナル”
実務をスムーズに“こなす”だけなら、指令台に座る人間は合理化が得意な人でもいいだろう。しかしそれだけでは“足りない”とし、三洋ビル管理が見込んだ人物は大塚康平さんだった。
なぜ大塚さんだったのか──。それは、入社当初は設備の部署として経験を積み、その後一級建築時事務所に配属となったことで、さまざまな角度の知識を習得。建物まるごとを把握する能力を持ち合わせているからだった。
2024年1月1日付けでコミュニティ事業部に転籍となった大塚さんは、まずは現在の状況を把握し、足りていない部分を洗い出した。
ちなみにコミュニティ事業部とは、主に分譲マンションの管理を行う部署で、日々の点検や運営管理をはじめ、理事会運営の旗振りなども行っている。その中で「これまで」の課題点を洗ってみると、フロント業務担当者の業務負荷と、特定の修繕工事を断ってきているなどの点が挙がった。
「それなら、新しいコミュニティ事業部を作ることができるかもしれない」、そう思った大塚さんは、今まで断ってきた修繕案件の相談窓口となり監督することにした。それなら培ってきた知識でのソリューションを用いた物件管理をすることができる。しかもそれだけではなく、自分もプレーヤーとしてフロント業務、時には工事者として現場を兼任し、業務の「効率化」と「現場感」も大切にした。
丸1年経って、大塚さんは今、どんなことを思っているのだろうか──。
現場に行くからこそわかる、
困っていることと、解決できること
これまでは「建物」という、ある種ハードなものを相手にすることが多かった大塚さんだったが、新たな部署で直面した新たなミッションは「人」を相手にするというものだった。
「分譲マンションの管理とは、たとえば100部屋のマンションなら100人のオーナー様がいらっしゃる。これまでは1人のオーナー様とのやりとりで解決策を見出していたところですが、この100人のオーナー様に納得・ご満足いただける解決策をご提示するというのは決して機械的に判断できるものではありません。こういいった難しさに最初は戸惑いました」と言う。
その難しさを心に刻みつつ、物質的な部分で自分が得意とするところから地道に進めていったという。細かなところでいえば、ドアクローザー(閉まる速度を調整する部品)の不具合で、扉が急に閉まる、または閉まらないといった場合、そのアームのメーカーへの問い合わせ、また設置環境によって新たな部品の選定をしなければならない。
途中から管理を引き継いだ建物であればなおさらで、図面や資料が不足していることも少なくない。これまでフロント業務の担当者は、メーカーに部品を確認、新しく協力業者を見つけ、現地調査の上で見積もりを作成するなど想像以上の手間がかかっていたのだ。
そこへ知識のある大塚さんが司令塔として存在することで、瞬時に適切な情報を提供することができるようになり、なんなら部品の最新情報も入手可能な大塚さんならではの采配で、最適な処置が可能となったよう。
これらは「アナログ」でしかできない仕事であり、建物をより理解し運営するための基礎になる。そしてこの基礎の記録は、そのままDX化の基盤になる。
次の目標は「アナログ」を大切に継続するためには、力強いサポーターを作ることが重要だ。事業部のDX化を図るのは、そうした背景からきている。
司令塔・大塚を中心にスタッフも増員。
分譲マンション管理をさらに手厚いものに
これまでは精鋭少人数で業務にあたっていたコミュニティ事業部。大塚さんを中心として新たに修繕対応に取り組み始めた新生・コミュニティ事業部が、事業の充実&拡大を目指すには、もう少し人数を増やす必要があると考え、今年の1月1日付けで新たなスタッフが参画した。
これにより、1人あたりの担当案件にもゆとりができた他、管理システムを構築を始め、点検や対応記録を全員が共有できるDX化の取り組みも行っている。
「点検に行った人が不具合などを発見した場合、それを持ち帰って協議することなく、その場で修理費用の見積もりができ、その場で提案できるような仕組みを作成しています。これにより格段に業務がスピーディでスムーズになりますし、なによりお客様にも喜ばれるのではないかと自負しています。
また、フロント業務に携わる人間が増員されたことで、一人ひとりの作業負担が減り、お客様に言われる前に提案ができるといった営業力を目指せるのかなと。
この部署の再生化に向けて、私ができることを一生懸命に、持てる知識をここぞとばかりに駆使していきたいと思っています」
前段で記した「仕事の効率化」についてだが、つくづく三洋ビル管理は「人間力で突破していく」という会社であると思った。必ずしもAI化がベストなわけではなく、現場にAIロボットが参上してスピーディに行えたからといってお客様が満足するとも限らない。大塚さんのような熱意ある人物が、ベストを思考し、解決した答えがお客様満足につながっていると改めて思わされた。