「受水槽」洗いのプロ!衛生的でおいしいお水を守るぞ!!

戸建てのご家庭ではあまりピンとこない方が多いかもしれないが、マンションや大型施設などには「受水槽」というものが存在している。しかし「うちは戸建てだから関係ない」──なんていうことはないのだ。例えば大型ショッピングモール。ここのフードコートなどで食事をすることもあるだろう。生鮮品を洗ったり、ラーメンの出汁を取ったり……。そこで使われている水こそ、受水槽を介しているもの。その水を、常に衛生的で安心安全を維持するために頑張る、清掃のプロフェッショナルの登場だ。

 

そもそも受水槽が必要な理由とは

蛇口をひねれば流水することは、もはや「あたりまえ」であるが、それはどのような過程を経ているのかを考えたことがあるだろうか。簡単にいえば、ダムからの水は取水施設から浄水場へ。そこでろ過などの処置が施された水は、送水施設を経由し配水施設へ送られ、各家庭へと水が届く仕組みになっている。

しかし、この流れでは十分な水量が得られない建物が存在している。それは先述したようにマンションや大型施設の類。水道本管の圧力だけでは上階まで水が上がらない場合や、大量の水を一度に使用する場合などだ。

一般家庭の戸建住宅でも設置しているところはあるが、基本的には3階以上の建物(※現在は3階までは賄えるものが多い)に対して、敷地内の地面もしくは屋上に「受水槽」が必要になる。

受水槽とは字のごとく水を貯めておく設備だが、管理を怠ればタンクの中に汚れや藻が発生して不衛生となる場合がある。

そのため受水槽管理に関しては、年に1回以上の清掃が法律で定められていることからも、重要事項と位置づけられる。それだけに、「入居者などが総出で清掃します」とはいかず、やはり知識を有する専門業者──つまりプロフェッショナルだけが行える業務なのだ。

それはそうだろう。私たちの健康に関わる大事な水を、不衛生かつ無知識で業務にあたっては取り返しのつかないことになりかねない。

そこで今回は、受水槽洗浄のプロフェッショナル・柴田貴将がどんな作業をしているのかを紹介しながら理解を深めていただきたい。その際、プロの仕事の迫力を増す意図で、彼が担当した中で“最も巨大な”受水槽清掃の模様をお届けする。

 

横10m✕高さ5m=300tの受水槽!

どうせ紹介するなら、担当している中で最も大きな受水槽の話を聞かせてほしいというリクエストに、「だったら──大型ショッピングモールですね」とのこと。そこで皆さんは、ご自身がよく利用する大型ショッピングモールをイメージしながら読み進めてほしい。

大型ショッピングモールをよく観察すると、敷地内のどこか(駐車場付近の場合も)、もしくは屋上に大きなタンクが見つかるかもしれない。それが受水槽であり、プロフェッショナルたちは“そこ”に入って作業をしているのだ。

 

「その受水槽は、横が10mぐらいの広さ、高さは5mもあるので専用のはしごを使って昇降します。貯水量は300トンぐらいとなります」

まったく想像がつかない量であるため、いろいろな比較対象を挙げてみる。小学校などにある一般的な25mプール。あそこに入る水の量はおおよそ540トンぐらいであるという。だとすると、あれよりは少し小さいもの。また、家庭で一人が一日に使う水の量は、平均で約200リットルだという。4人家族なら約800リットルということで1トン弱。300トンあれば、単純計算で約1500人が一日分の水量を賄えることになる。

そんな巨大な受水槽を、どんな手順で、どんなところに注意し、どのように洗浄しているのかを訊いてみた。

「清掃にはいる前に、まずは機器類を見て現状の確認をします。ポンプは正常に作動しているか、電圧・電流はどうか、圧力メーターはどうか。水質は必要な塩素濃度を確保されているか。
さらに目視とともに、耳で音の正常異常も判断しています。
これは、現状の把握と共に、作業後に異常が起こっていないかを知るためです」

そうした確認を行った後、「受水槽内の水を抜きます」と言う。300トンの水を抜くとは、一体どれほどの時間がかかるものなのだろう。

「最大で4時間ぐらいですかね(笑)。しかしその時間をじっと待っているわけにはいきませんので、私たちは排水ポンプというものを使って、1〜2時間に短縮しているんですよ」

──びっくりした。4時間ずっと、吸い込まれてゆく水を眺めて過ごしているのかと思って心配にもなったが、実際はその1/4〜1/2であるようだ。しかもその間、暇を持て余してショッピングやお茶をしているわけではなく、「ポンプの点検記録を取ったり、タンクの外周を点検して劣化具合を確認したり、写真に残すなどの作業を行っていますよ」と言う。

清掃による水質だけではなく、上階に水を上げる圧力こそポンプの役割であることからも、この点検には神経を注いでいるようだ。

 

いざ、大型受水槽の中を清掃!

さあ、巨大な受水槽の中の水がすべて抜けた。いざ清掃作業へと移行する。

このぐらいの広さになると、4人ぐらいで作業にあたるのだという。ちなみに小さな物では、横50cm✕高さ1mほどとなり、ここでは1人が作業するのがやっとなのだそう。

「重要なのは、デッキブラシのようなものを使用しないこと。プラスチック素材(FRP)でできているタンク内に傷がついてしまうからです。よってすべて手作業で行っています」

この巨大なタンク内を人力、手作業! その事実にまずは驚きを隠せない。

「弊社の場合ですが、受水槽専用洗剤というものを使い、それをスポンジに染み込ませて4人が一斉にタンク内の内側を回っていきます」

補足すると、雑巾がけの要領で4人が別々の箇所になるよう配備し、一斉にタンク内の床と壁面を洗浄していくということのようだ。

しかしそれでは「洗い残し」が発生するのではないかと不安がよぎる。

「大丈夫です! 洗剤がついた部分は5分ぐらいすると明らかにきれいになっている。その時点ですぐに洗い残しが明確になりますので、そこを今度は補っていきます」。

 

安心した。洗い残しは「無い」ことが判明した。しかしこの作業にかかる時間は約1時間ということで、彼らは1時間の間ずっと、広いタンク内をスポンジで掃除したり受水槽内に異常が無いか点検を行っている。

このプロフェッショナル・柴田に最後に質問してみた。なぜこのような特殊な事業ができるのかを。

「実は、私の前職が水回り専門の業者であり、タンクの清掃も多く引き受けて来ました。後に三洋ビル管理に転職すると、私を中心に専門のチームが発足し現在に至ります。何百件と清掃を行ってきましたので、故障が発見された時の対処法も心得ています。現在はそうした技術指導をすることも業務の一貫となっているんですよ」。

こうした専門職に守られて、日々私たちは安全で美味しい水をどこでも得ることができているのだと思うと、何とも感慨深い。

そんな“カッコいい”プロフェッショナルの柴田だが、3人の子の親であり「次男の野球チームの役員をすることと、帰ると出迎えてくれるスピッツ(愛犬)のゆきちゃんが日々の楽しみです〜」と語る、優しいパパでもあったのだ。

 

PROFILE

九州営業推進本部
柴田貴将(2006年入社)
建築物環境衛生管理技術者
給水装置工事主任技術者
貯水槽清掃作業監督者

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