
「モーレツ社員」──こんな言葉が流行った昭和。第一次ベビーブーム世代の仕事意識を表現したものだ。1974年に朝日新聞社が行った世論調査で「あなたの仕事感」を尋ねたところ、「仕事はうち込んでやるべきもの」が53%と半数以上が回答。「生活のためにやむを得ないもの」は30%だったとしている。当時の男性の仕事傾向は「うち込む」傾向が強かったようだ。それじゃあ、令和となった今の時代は?
グループ座談会出席者
入江浩平・・・・・入社歴10年
千代田敏明・・・入社歴10年
中嶋幸耶・・・入社歴5ヶ月
立石純一・・・入社歴6ヶ月
江口慧輔・・・・・執行役員
目次
新制度「週休3日」の導入は、
すべての人を対象に一気に変えたのか?
── 週休3日制を導入したのは、いつ頃で、どんな目的はありましたか?
江口 まずは自社のリネン工場(福岡県うきは市)で2023年9月より、中途採用の募集を実施するタイミングに合わせて導入しました。
「週休3日制」で人材を募集したのは。弊社のリネン工場の仕事の中でも、リネンを運搬する配送スタッフです。従来の配送業務では、一日7時間15分勤務であり、月7休という制度です。しかし、道路事情や天候、またお客さまのご都合で発生する待ち時間などもあり、多くの人が残業を余儀なくされていました。
これでは一人にかかる負担も大きい上、何より週単位・月単位の労働時間を超過してしまう傾向があったのです。現代の労働基準法に則ると、この就労状態では雇用環境が最適ではないと判断し、新たな制度に踏み切りました。
── とはいえ、これまで、一日7時間25分・月7休で働いてきた方々は、「週休3日なんていらないよ!」という考えにもなるんじゃないですか?
江口 仰るとおりで、まだ賛否両論あるところではあります。なので、この新しい条件で募集をかけ入社される方は週休3日制で、既存社員は選べるようにはしています。が、これまでの働き方が自分の中で定着しているからか、「私も週休3日にしてください」という申し入れは今のところありませんね。
── さすが!! 三洋ビル管理さんらしい、愛社精神の高い働き者のスタッフが多いですね!(笑)
江口 本当にそれはありがたいことです。私個人としても、これまでの働き方でごまんぞくいただけていたのか、率直なご意見を伺いたく、社歴の長いお二人に同席してもらいました。
現在は営業職にチェンジされていますが、数年前までは配送ドライバーを担っていた千代田さんと入江さんです。
創業以来の就労条件で働いていた、
ベテラン配送ドライバーの声はいかに
── 入江さん、千代田さん、どうぞよろしくお願いします! 早速ですが配送ドライバー時代、どんな仕事内容で、就労環境に対してはどんな思いがありましたか?
入江 私はこの会社に来て配送5年、営業5年を経験しました。今回は配送ドライバーの勤務体制ということですので、私の配送ドライバー時代の話をしますね。
まず、10年前は働き方改革がされる前なので、当たり前のように時間外労働(残業)がありました。うちの会社に限らず、世の中全体がそうだったはずです。たとえば、朝5時に出社して出発、日によってコースは違いますが、会社に到着し、荷下ろしはだいたい14時頃、15時に退社という感じでした。
── 9時間超の勤務ですね!
入江 そんな時代もありましたよ(笑)
── 今の「週休3日制」を考えたら、大変な時代だったなと思いませんか?
千代田 私は、仕事が過酷だったと思ったことはありませんでしたね。お客様に恵まれたことも大きかったと思いますが、喜ばれたりすることが労働意欲につながったものです。
「週休3日」で入社をしたお二人。
今の時代らしい、メリハリのある生活が
── 今度は新制度で入社した、立石さん、中嶋さんにお伺いします。ズバリ入社の決め手は「休みが多い」ことですか?(笑)
立石 正直に申し上げてその通りです。週3日の休日という条件は見たことがありませんでした。
とはいえ、なぜ「休み」にこだわったかというと、私には大学生の長男と高校生の長女がいるのですが、前職は転勤続きで単身赴任生活を余儀なくされ、子どもたちが小さく可愛い時期になかなか一緒に過ごすことができなかったんです。
それを取り戻したいという気持ちもどこかにありまして、子どもたちが学生のうちは、親子が揃う時間を作りたいなと思ったんですよね。
── 何ともいいお話です!! なるほど、休みに対するこだわりが、家族との時間にあてるためとは涙がでます。実際この会社に入社し、現在は週3日の休みを確保できていると思いますが、どんな時間に充てていますか?
立石 そうですね、土日を使って家族4人で旅行に行くことも増えました。最近では大分の温泉に行ってきましたよ! これまでは年末年始にしか長く一緒にいられることがありませんでしたから、家族と過ごせる時間が本当にありがたいと思っています。
── 土日に学生のお子さんたちとの時間を過ごし、もう1日を自分のための時間に充てることもできますよね?
立石 そうなんです! とはいえ、今はまだ趣味の時間を満喫するまでには至っておらず、もっぱら奥さんの家事を手伝ったり、家のまわりの掃除をしたりしていますね(笑)
── 中嶋さんも、やはり休みの多さはポイントになりましたか?
中嶋 私も正直なところそうです。理由は立石さんと似ていて、前職は日曜と祝日しか休みがなかったんですよ。祝日がなければ、ほぼ6連勤があたり前でした。
私にも5歳と3歳の子どもがおりますので、やっぱりこの時期にあまり一緒にいられないことに不安や不満があったからですね。
配送業務は全国的に人手不足。
条件の緩和で少しでも働き手を確保できれば
── この週休3日を、ご家族との時間に充てているというお話、正直ほっこりしました。新制度の導入がこのように利用され喜ばれていることで、多くの方の需要があるのではないかと感じます。
江口 私も、今回新しく入社してくれたお二人の、率直な意見が聞けて「これでよかったんだ」と思えましたね!
正直なところ、配送業務や工場勤務は全国的に人手不足が加速している状態にあります。我が社でも、どうやったら人材を確保できるかという課題があるのは正直なところなんです。
── そこで「週休3日制」に踏み切ったのだと思いますが、実際、応募の反響はいかがでしたか?
江口 おかげさまで、これまでにないぐらいの応募をいただきました。現状のスタッフからは「週休2日でいいよ、とか月7休でいいよ」という声が多かったもので、なかなか踏み切れないところではありましたが、自分の時間や家族との時間を望むのも然りだと思います。
── 今後は、この週休3日制で統一していくのですか?
江口 現段階ではまだ、確定的なことは言えないんですよね。現行のままでやりたいという方も多くいるので、そこは尊重しつつ、もう少し様子を見守っていこうという考えです。
仕事と自分時間・家族時間──。
一度きりの人生をバランス良く満喫するためには、“半分より少し多め”の労働時間で、“生活できるだけの給与”があればいい、と考える人は少なくないのかもしれません。
モーレツ社員と揶揄された時代は半世紀前のこと。会社のために身を粉にし、家庭を顧みず働くということは、人としての本当の生き方ではないというのが現代の声。
三洋ビル管理ではそうした風向きをいち早く察知し、今後も時代にあった就労環境に改善していくのだろうと思います。