国内では三洋ビル管理が2番目!?自社リネン工場に導入した空港のような“X線検査機”

日頃このコラムをお読みいただいている方なら、「三洋ビル管理」という会社の従業員思いな姿勢や、作業効率を高めるための仕組み、従業員に“うれしい”労働環境の改善など、「そこまでやる〜!?」という驚きの改革や導入で、快進撃にワクワクしていただいていることと思う。

ドラマでもドキュメンタリーでも、「困った」状況下での「ヒーロー見参」あるいは「窮地からの状況好転」はワクワクし、感動を覚えるものだ。

──些か回りくどくなってしまったが、この前置きをせずにはいられないのが三洋ビル管理の“やり方”。

今回は、今後のリネン業界を牽引するであろう「ユニフォーム用X線検査装置」を導入したという話だ。

 

国産初の「ユニフォーム用X線検査装置」!
「ワイエイシイマシナリー」社製を導入した理由

2024年7月1日、自社リネン工場(福岡県うきは市)に、ワイエイシイマシナリー(株)製のユニフォーム用X線検査装置がやってきた。厳密には、ユニフォーム用X線検査装置に加え、仕分け機能を加えたオートマチックな機器で、その名も『ALPS(アルプス)』という。

その機器が、いよいよやってくるという前夜、工場長である重松直人は「嬉しさのあまりほぼ寝付けなかった」という。

なぜそこまで“うれしい”のか──それは、第一に従業員の安全が確保されるからだ。

 

空港を利用したことがある人はわかると思うが、危険物などの持ち込みがないかを確認する、いわゆる“X線検査”というものがある。ポケットにナイフなどを隠し持っていたとしても、わずか1秒足らずの時間、そこを通過するだけで判明する装置だ。

それをイメージしてもらって差し支えないうのだが、業務用のリネン工場では、特別建屋で医療用のユニフォームなどを扱っている。看護師の方のユニフォームも然りで、もしかしたら注射針が混ざってしまっていることもあるかもしれない。その可能性はほぼゼロに等しいが、ゼロであるとは限らない。

これまでは、病院からユニフォームなどを回収してくると、すべて人の手でポケット内に取り出し忘れがないかをチェックしてきた。その際、万一注射針が混入していた時、手指を刺してしまう危険性があるほか、感染症などのリスクは免れないかも知れない。

注射針のほか、カッター、ハサミ、安全ピンといった類も危険物だ。

そうした危険リスクを限りなくゼロにしたいと、三洋ビル管理では数年前から導入に向けて慎重に検討を行ってきた。

メリットはそれだけじゃない。当然のことながら瞬時の判定により作業効率は爆上がりした。従来のスピードでは、どれだけ頑張っても人力の限界として、1時間で300〜350枚のポケットチェックしかできなかった。しかし今回導入した機器に任せれば、1時間で1800枚も確認してくれる。なんと6倍以上の仕事をしてくれるのだ。

 

大切な従業員は減らさない。
でも、従業員が楽できる機器はどんどん入れる

昨今、ファミリーレストランなどでもロボットやセルフ化などが加速し、配膳をしてくれるロボ、お客さんが自分で注文できる端末、また自分で会計をするセルフレジなどが導入されている。これにより、雇用が減少するといった危機感を覚えた人の声が多く聞こえるようになったが、三洋ビル管理でも「他人事」ではなかった。

一生懸命やってきた業務だというのに、「明日からは機器がやります」となれば、当然「自分の仕事がなくなるのではないか」という一抹の不安はよぎるはずだ。

機器に自分の仕事を奪われる時代=自分の職と収入を失う時代。

しかし、三洋ビル管理において、そんなことがある筈はない。これまで心血を注いで作業にあたってくれた仲間を、機器に心変わりしたからといってあっさり見捨てたりするような会社ではない。じゃあどうするのか──。

「ポケット内のチェックはこれまで約11人で行ってきましたが、機器の導入により、モニターをチェックする係を含め5〜6人の配置で済むようになりました。よって、半分の人はその業務から外れることにはなるのですが、その人員は、私たちがもっとも大事にしている品質管理(仕上がり・検品)にまわってもらい、より高い品質の提供に貢献してもらっています」(前出・重松工場長)

重松工場長は、実は「この日」を夢見ていたのだ。工場立ち上げ時の少人数精鋭による“きつい”時代を知っているだけに、ネックになっていたところの一つひとつが解消され、増員とともに生産性が上がるということ。今それが、理想から現実になってきている。

「うちの会社のいいところは、従来のリネンの会社と発想が違うところです。リネン工場は“酷暑で重労働”という環境は“致し方ない”とされてきたところにメスを入れ、会長・社長・副社長の働きかけで“涼しい”リネン工場を現実化しましたし、今回の導入で“楽ができ、品質が向上する”環境へと変わりました」(前出・重松工場長)

 

莫大な金額を投じた機器の導入だが、
3年ほど前から開発に取り組んできた

「あったらいいもの」「あると目標が叶うもの」──そうした「理想」が見えているなら、「現実化」することという、一択にほかならない。

三洋ビル管理では、とにかく品質の向上と作業効率のUP、そして大切な人材の適材配置と従業員の快適な労働環境という、一見相反する課題を掲げて取り組んできた。“取り組んできた”というと、せねばならぬ(本意ではないけれど)という印象になるかもしれないが、その逆。

会長も社長も副社長も、揃って「社員が第一」を掲げる会社であるため、社員たちには楽しんで就労してもらいたいし、なんなら上手に楽して欲しいとさえ願っているのだ。

それを根底に、会社として、また社会貢献として、最高の品質を提供したいこともまた人思いたる所以。

 

今回導入した『ALPS』も、「そこに売り出しの機器があったから」と飛びついたのではなく、3年もかけて開発の段階から協力してきた経緯がある。

 

「リネン工場ではこんな困り事がある」「医療リネンではこんなリスクが考えられる」など、細かな状況を提供しつつ、それをクリアできる機器の開発を共に考えてきたのだ。

 

その思いが通じてか、導入時にはメーカーであるワイエイシイマシナリーの社長をはじめ、責任者の方が一定期間常駐してくれるという熱の入れよう。従業員に使い方のレクチャーはもちろん、機器の見守りを行ってくれたという。

 

今回、三洋ビル管理ではこうした最新鋭の機器を導入することができたが、それはまだ一般的ではない。とはいえ、その頭一つ抜けたところをひけらかしたいのではなく、リネン業界のモデルケースとして理想を見せていきたいのではないかと筆者は推測する。

 

どれだけAIや機器が進んだとしても、結局は心通う人同士が大事であり、人あっての機械=生産性の向上という三洋ビル管理の考え方に照らし合わせると、「持続可能なリネン工場とはこういうものだ」を体現してくれたのではないかと僭越ながら思う。

 

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