
三洋ビル管理が所有する業務用クリーニング施設「エルスうきはリネン工場」(福岡県うきは市)。これまでのコラムでも、折りに触れ紹介してきた施設だ。
医療・食品業をはじめとするさまざまなユニフォームを請け負い、「もはや洗ったことのないユニフォームはない」ほどの大規模工場。
──が、あったのだ。洗ったことのないユニフォームが。
それは「スポーツ選手のユニフォーム」。
そこで今回は「2024年12月、初めてスポーツ選手のユニフォームを洗った」、という話題をお届けする。
目次
浮羽究真館高等学校がつなぐ、
ラグビーと、地元の絆
「エルスうきはリネン工場」の事業部長であり、三洋ビル管理の執行役員である江口慧輔さんによると「ある日突然ひとりのラグビー選手が当社を訪れ、『チームのユニフォームを洗ってもらえませんか?』とおっしゃったんです」という。
江口さんご自身ラグビーに詳しくなかったため、チーム名も訪れた選手の名前もわからなかったそうなのだが、先述の通り「スポーツ選手のユニフォームを洗ったことがない」ことから、「ぜひ前向きに検討させてください!」と返事をした。
突如訪れたというラグビー選手こそ、うきは市に拠点を置くラグビーチーム「ルリーロ福岡」に所属する黒川ラフィ選手(BK-WTB)。聞けば、地元企業に営業で回っている際にルリーロ福岡が練習の拠点にしている浮羽究真館高校のOBの方から「卒業生でクリーニング工場を経営している人がいる。相談に行ったらどうか」という話をもらったという。
三洋ビル管理の石橋幸男会長は、この県立浮羽究真館高等学校(旧浮羽高校)の卒業生。「エルスうきはリネン工場」とはご近所であるが、それはそもそも石橋会長が、母校の近くだからこそ工場を建設したのであり、地元の活性に貢献したいという思いがあったから。そんなご縁から紹介を受け、先の黒川選手が訪れたようだ。
「選手が営業で企業を回ることがあるとは思っていなかったので、いらっしゃった時はびっくりしました! 非常に礼儀正しく、終始笑顔でお話される姿に好感を覚え、ラグビーには詳しくなかった私ですがなんとか力になりたい、と思ったんです」とは江口さん。
聞けは、ルリーロ福岡がジャパンラグビーリーグワンに昇格できたのは2024年。それまではスポンサーの支援などもなかったことから、スタッフが手洗いでユニフォームを洗濯していた。今後はもっときれいなユニフォームで試合をさせてあげたい、またリーグワン参入にあたりより一層増えるスタッフ業務に対応するためにクリーニングをアウトソーシングしたいと求めたのだった。
選手のユニフォームは一筋縄じゃない!
どうする!? 擦り傷の汚れ、泥ジミ・草ジミ
2024年12月に初めて洗い始めたと先述したが、それまでには数ヶ月を要し、洗剤メーカーの方による立ち会いのもと5〜6回はテスト洗浄した。
「スポーツ選手のユニフォーム、万一色が褪せてしまっては強そうに見えない。背番号も刺繍のものとプリントのものがあるので、それも考慮しないといけない。しかもスポンサーの社名を付けているので、それが薄れて見えないなどがあっては大問題です。そんな繊細な選手のユニフォームですが、思いも寄らない汚れがたくさんあるんですよね……
詳しく聞けば、ラグビーというフィジカルなスポーツゆえに、擦り傷などの怪我は日常茶飯事のようで、すり傷等の汚れにはじまり、スポーツ選手特有の汗汚れ、芝生の上をスライディングすることで付着する泥ジミ・草ジミもある。さらにラグビーボールが滑らないように手に「グリップ」というすべり止めを塗るそうだが、「それをユニフォームのパンツで拭いているんですよね(笑)」と江口さん。
この状況に太刀打ちするためには、洗剤メーカーの見解を仰ぐとともに、実際の洗濯にはクリーニング師の資格を所有するものが担当するなどして態勢を整えた。
江口さんも愛娘を連れて初観戦!
応援すると共に、洗濯のポイントを観察
江口さんご自身、ラグビーにはまったく明るくなかったそうだが、この度ルリーロ福岡との取引がスタートするにあたり、愛娘を連れて試合を観戦したそう。
「初めて見るラグビーの試合は、テレビで見るより激しく、人と人がぶつかり合う音なども聞こえてくる迫力満点のものでした。私の幼い娘も最初は『痛そうだね』なんて口にしていましたが、最後は『面白かった』と言っていましたので、真剣勝負の世界に感動もあったようです」
という初観戦の感想だったが、同時に「どんな動きをして」「どんな汚れが着くのか」を、プロの目で見てチェックしていたとも。
また、選手のユニフォームを洗うことになった工場の皆さんも「試合観に行きたい!」などと話題は持ち切りなようで、工場を挙げて応援ムードが高まっているという。うきは市としても、街を挙げてルリーロ福岡を応援しており、街の至る所にのぼりなどが掲げられている。
地元のチームの活躍を願う気持ちは、三洋ビル管理の石橋会長も同様で、この度ルリーロ福岡のスポンサードとなった。テレビ中継の際は、選手たちの背中に「三洋ビル管理」の文字があることも見ていただけたら何よりだ。
今後は、まだまだ選手としての報酬では豊かな収入が得られない選手たちを、「エルスうきはリネン工場」で就労していただくことなども検討しており、すべての人にとってメリットのある就労環境と、地元の活性化に貢献するべく引き続き奮闘していく。
「エルスうきはリネン工場」は、選手たちのユニフォームを全力で洗うことで、今後もチームの大躍進を見守っていく。
がんばれ!! ルリーロ福岡!