成長過程も業務連絡も「見える化」してストレスフリー!三洋ビル管理 東京本部が進めるDX化の取り組み

創業50周年を迎えた三洋ビル管理は、福岡県福岡市が発祥。本社も福岡市にあるが、創業から12年後に首都圏の需要に対応するべく東京本部(当時は東京支店)を開設している。

本社機能は福岡であるものの、東京本部は東京の業務に即したやり方を改革している。本社による全社改革を待たずしてスピーディに最善を取り入れられる社風も、三洋ビル管理だからこその風通しといえよう。

今回はその東京本部が、本社に先駆けて導入した取り組みをご紹介する。お話くださるのは、東京本部 マネジメント本部の西城優(ゆたか)さん。

 

欠員の補填は社員以外でも補う!
派遣会社とのタッグで社員が業務を遂行できる

── このお話を伺う前に、これまでの背景と社内スタッフの動きをお教えください

西城 はい、私たち東京本部では、月に1~2棟、新規受託物件や新築のマンションなどの立ち上げを行っているんですが、そこに清掃員の配備は必要不可欠です。清掃員の仕事の説明でイメージしやすいマンションでいえば、入居者の方が24時間出せるゴミ置場にゴミを出しますが、そのゴミを指定の収集日に合わせて定位置に移動させるとか、ビニール袋からこぼれてしまった生ゴミの汁などを拭き清掃するということもあります。

また、風が強い日であれば共用廊下やエントランスにたくさんの落ち葉が舞い込んできてしまったら、それを掃き掃除することもそうですし、共用廊下の照明が切れてしまったら新しいものに交換するなどもあります。

そうした大事な役割を担う清掃員ですが、新築の現場では良いタイミングで配備できないことも発生します。

とはいえ、入居者はそこでの生活を始めていくので、清掃員がいないでは済まされませんよね。それを補填するために、社員がカバーしているという現状がありました。

── なるほど。清掃員さんの採用には、時間がかかるということもあるのでしょうか

西城 その通りです。まず労働時間を含めた採用条件に合致するかどうかというところで、応募してくださる人数も絞られる。さらに「今日採用したので、明日から現場に」というわけにはいかず、やり方や心得など従業員教育の時間も必要になるからですね。

── その場合「社員の方が補填していた」ということですが、その社員の方は他にも業務がありつつ、サポート業務としてそちらも並行してやるということですか?

西城 はい、「〜ねばならない」ということでやってきたのですが、新規の立ち上げが増えたことで「これでは」となり、去年、今回お話する派遣会社とのタッグに踏み切りました。

── メリットとしてはどんなところが挙げられますか?

西城 これまでは社員の数名がそれぞれの現場を担当せざるを得なかったので、朝6時に現場に入り、清掃業務を行っていました。よって、出勤しても社内にはスタッフが少なく、打合せしたいことがあっても帰社後だったりしていました。

しかし今は、現場を派遣の方がカバーしてくれているということで、欠員対応に割く時間が減り、朝の出勤時に社員が全員揃っています。当然、打合せなどもスムーズにできますし、その他の重要な業務に集中してもらえるので効率がいいですよね。

また、社員を採用するにしても「清掃業務もお願いします」というのではなく「欠員対応をする場合もあります」と謳えることで、より入社後の業務をイメージしやすくなったのではないかと思います。

同時に、他社さんで導入している事例は、私はまだ把握していませんので多くはないと思います。その点でも弊社の優位性を自負しているところです。

 

進捗情報の共有と、新人の習熟度を視認化。
関係者がシステムを通じてすぐに共有できるように

── まず、「進捗情報の共有」に関するシステム化ですが、主にどんな情報を共有したかったのでしょう。

西城 弊社が管理させていただいているビルやマンションに、お知らせが書かれた紙の資料を配布・掲示しています。たとえば「◯月◯日はエレベーター点検がありますので◯時から一基利用できません」といった内容です。

こうしたお知らせが漏れてはいけませんので、社内スタッフは「◯◯物件に配布してありますか?」など口頭で確認し合っていました。別の現場に行く際に寄るなど、それぞれが効率よく配布先に行けることを意識して「私がついでに持っていけますよ」ということを共有できていたからです。

しかし管理棟数が増えたことなどもあり、口頭確認では追いつかない背景がありました。

── すでに配布済みの物件に、別の人が持っていくといった無駄も発生しそうですよね。

西城 そうですね、おっしゃる通りスタッフが配布物を重複して持って行くこともありました。このような業務の進捗状況をシステムで共有することで配布スタッフの重複を避けることもできるようになりました。同時に、社内で資料を準備するスタッフも「◯◯物件には誰が持っていってくれているんだろう」と視認できるため、さまざまな部署との連携もよくなったと実感しています。

── このような情報の“見える化”を、新人の習熟状況にも活用されたとか?

西城 はい、同じ部署内で日々一緒に仕事をしていれば「ずいぶん仕事を覚えたな」といった成長がすぐにわかりますが、会社の業務とは部署の垣根を超えて連携していくことが多いので、「どこまでできて、どこからは未習熟なのか」を予め把握することで仕事をスムーズにできると考えました。設備点検作業を例に挙げると「A物件は点検経験済・一人対応可能、B物件は経験のみ」といった習熟度が分かれば他部署のスタッフも仕事を頼む際に配慮しやすいですよね。

── その「習熟度」とは、上司の方が判断して評価していくのですか?

西城 いえ、本人・上司の面談を通じて評価しています。流れとしては1ヶ月に1回、新人である本人と上司が話し合う場を設け、自分自身で打ち込んでいきます。自分自身の評価と上司評価を照らし合わせることで評価内容に納得できますので、「本当はよくわかっていないけど、なんかわかっているという評価にされてしまった」といったような誤解も防げますよね。

── とてもいいですね! 自分自身の成長を自分で確認しながら進めていくことができますので、間違いない成長につながっていきそうです。

しかし、これを導入した背景も伺っていいですか?

西城 三洋ビル管理は、創業以来、一人ひとりのやる気と能力を重視する社風にあったので、ある意味「個人商店」のような感じで、自身と責任をもって仕事をしてきた会社です。

それはそれで素晴らしい人材の宝庫だと誇れるところではあるのですが、会社の規模や時代の流れを考えた時、「会社なのに個人商店でその人しかわからないことがあってはマズい」と議論し、さらに「社内の誰もが同じ目的で、同じ品質を提供できるようにならないといけない」という意見で一致し、今回のような情報共有を導入したんですよ。

 

携帯電話で管理しているビルの構造がわかる!
「管理ロイド」の導入で瞬時に関係者が把握できる

── まさにDX化の最たるものといえば、この「管理ロイド」かと思うのですが、少し前の時代なら考えられないことでしたよね。

この記事をご覧の皆様にも、管理ロイドがどんなものかを簡単にご説明いただけますでしょうか。

西城 ではまず「管理ロイド」とはどんなものかをご案内しましょう。

自社で開発しているところもあるかと思いますが、弊社は既存のアプリを用いて情報共有しています。

自分が担当している物件は、自分だけで情報を把握するものではなく、点検・検針・清掃報告などを社内関係者と連携する必要がある他、そのビルのオーナー様や依頼担当者様などにもお伝えする書類が必要です。

また、管理している物件で不具合が発生した場合、弊社の担当スタッフが現場で確認し、その不具合の原因と状況を記録。それを会社に戻ってから物件の配置図などをピックアップし、コピーないしスキャニングをして、そこに不具合箇所の記入や内容を書いていく、ということが従来でした。

しかしこの管理ロイドを使えば、現場にいながらにして携帯電話を利用し、アプリに予め保存しておいた物件の配置図画像を元に不具合箇所を示すことができるだけでなく、先の点検・検針・清掃報告もできてしまう。よって、帰社後に書類作成という時間と手間が省けます。

── 業務のペーパーレス化という環境配慮だけでなく、従業員の就労改善に大きく貢献するアプリですね! また、その場の出来事をその場で記録することで、帰社後に曖昧な部分もなく誤認識といったミスなども減りそうです。

西城 まずは、就労時間が短縮傾向に向っているということは、理想に近づいたかなと評価できるところではあります。

また、「誰が来てもいい仕事をするよね」と言ってもらえることがベストなので、1人の現場担当しか把握していないというリスクや未共有を避け、誰が現場に行っても理解がある状態で業務にあたれるようになったと思いますよ。

── 良いと思うことは、本社に先駆けてでも導入するというスピード感。その土地にあったシステムにより、やりづらさの解消や効率UP、提供品質の向上などにつなげていく姿勢が素晴らしいと思います。

これからも本社だけではなく、業界に先駆けたシステムの導入や改革を期待しています!

 

一覧へ戻る