さまざまな企業で一般的に行われている「ジョブローテーション(略:ジョブローテ)」。たとえば営業に配属された人が人事へ異動するといった具合だ。よって、ちっとも珍しい話題ではない、とお思いになるかもしれないが──。
実はリネン工場としては「珍しい」ことが起きたため、この記事に執筆したいと思う。
工場の作業着から、ネクタイへ。
現場を知る内勤スタッフの誕生
一般的にリネン工場での勤務は、「営業で採用された人は営業として」「工場作業で採用された人は工場内で」というのが相場だ。もっといえば「洗濯で採用された人はずっと洗濯」「配送で採用された人はずっと配送」という具合に。その相場と変わらず、うきは工場でもそのような勤務形態でずっとやってきた。
しかし3〜4年前から「もっといろいろな仕事を経験できたほうがいいのでは」という社内の動きが起こり、“工場内”でのジョブローテを始めたという。なぜ“工場内”と強調したかというと──早い話、“工場外”のジョブローテを実行したからである。
これこそがまさに「珍しい」人事異動といえる。
今回ご紹介する2名は、昨年12月と今年6月に、工場勤務から初めて内勤スタッフとして辞令が出たのだ。これはまさに革命的な出来事であり、うきは工場が何を目指しているかに迫ってみる。
最初に登場するのは、今年6月に辞令が出された戝津順一さんだ。
── まず戝津さんは、いつからこちらで勤務されているのですか?
戝津 私は中途採用で入社し、もうすぐ3年というところです。
── 入社後から最近までは、工場での勤務だったのですよね? 前職でも同業だったのですか?
戝津 いえいえ、実は前職では営業をやっていたんです。でもその業界自体の先細りなどもあり、思い切って転職を考えました。「どうせ転職するならやったことのない分野を経験したい!」という思いから、こちらに応募したんです。
── 工場勤務では、主にどんな業務を担当していたんでしょう?
戝津 病院のシーツや布団などの寝具を扱っている部署でした。私も一緒に作業にあたっていましたが、入社してしばらくすると責任者として現場を任せてもらえるようになり、直近では指導や教育にも携わっていました。
── それで今回は、「営業」に配属になったわけですが、率直にどんな感想でしたか?
戝津 正直最初はびっくりしましたよね(笑)。でも話を聞いてみると、営業先もよく知るところを回ったり、既存顧客からのご紹介で挨拶に伺うというものだったので、「ノルマのある飛び込み営業」のようなストレスはなくやれるかなと思いました。
まさか、工場勤務のつもりで入社したのに、作業着ではなく再びネクタイにスーツで出勤することになるとは夢にも思っていませんでした(笑)
共に汗を流してきたからこそ、
事務の仕事もスムーズにいく
うきは工場として、工場から内勤スタッフ第1号に選ばれたのは藤野龍二さん。それまでは仲間たちとともに洗濯を担当したり、工場内での業務にあたっていたが、昨年12月に辞令が出て、内勤スタッフとして「総務」を任されているとぃう。
── 藤野さんのこれまでの経歴を教えてください。
藤野 今年で入社5年目になります。前職は父親の仕事で建築関係でしたので、肉体労働の仕事に就きたいと思ってこちらに応募したんですよね。
── それが今では肉体労働ではなくなりました。その辺はどう思っていますか?
藤野 新しいことを覚えるのは仕事も楽しんでやっています! なにより「現場にいたからこそわかること」が結構あるなあと感じています。内勤スタッフとして採用されるより、工場を経験してから内勤スタッフになるほうがメリットが大きいように思います。
── 具体的にいうと、どんなことにメリットがあるといえますか?
藤野 うきは工場では、障碍者の方や技能実習生たちを含め外国人スタッフも多く働いています。日本での生活にまだ慣れていない人たちが、どんなことに困っていて、どんなことに悩んでいるのかをある程度知っているので、そういうことを活かしていきたいですね。
── なるほど。内勤スタッフとして、現在はどんな仕事をされていますか?
藤野 現在は「総務」としての仕事をしています。たとえば、
◯従業員の雇用の管理
◯採用活動
◯入退職の処理
◯給与計算
◯技能実習生の手続き
◯技能実習生の生活見守り
といった感じです。
“層の厚さ”が成せること。
良い人材を適所に配置していく
今回の藤野さん・財津さんの人事異動に伴い、うきは工場としてはどのような考えや想いがあったのだろうか。
執行役員の江口慧輔さんによると「リネン工場は、現場と内勤の仕事が完全に分離しているのが一般的です。しかし弊社では、数年前から『現場にいたからこそリネン工場全体のことがわかる』ことに着目し検討を始めました」と言う。
江口さんに具体例を聞いてみると、営業スタッフが営業先でよく聞かれることといえば「これ洗えますか?」ということだそう。例えば、商店街のお祭りで使用する着ぐるみであったり、スポーツ関係のユニフォームであったりという具合だ。
しかし、営業として採用され、営業の現場しか知らないスタッフであれば「ちょっと持ち帰って確認します」となる。ところが藤野さん・財津さんのように現場で働いた経験がある人なら、即座に「洗えますよ!」と回答でき、場合によってはその場で受注に至ることだってあるだろう。
このスピード感こそ営業の命である上、知識だけではなく「体験」として知っていることは強い。そうした発想から江口さんは、現場から営業スタッフがほしいと考え、工場長である重松直人さんに相談したのだそう。
そこで重松さんから推薦されたのが「財津さん」。「財津さんは前職でも営業を経験されていますし、経営的な視点を持っていらっしゃると思いました。なので江口さんに推薦させてもらったんです」。
江口さんにしてみると「工場側からしてみると、主力の2人が内勤スタッフとして抜かれてしまうのは痛手だったはず。でも快く出してくれた重松工場長には感謝しています」と言い、さらに「この主力の2人が抜けても、工場が安定的に運営できるようになったことは感慨深いです」と、人材の層の厚みを伺わせました。
さらに「今回の2人が良い事例になればいいと思っていますし、今後もこうした配置換えをしていけたらと考えています」と江口さん。リネン工場の先進的な取り組みに、今後も目が離せません。









