未知なる敵“新型コロナウイルス”との戦いに挑む〜病院清掃スタッフの苦難のドキュメント〜

2019年、中国・武漢で原因不明のウイルス性肺炎が初めて確認されて以降、その感染は世界中へあっという間に拡大していきました。翌年春には、日本でも爆発的に感染者が増加し、各地の医療施設はこれまで経験したことのない程の混乱状態に陥りました。500床以上の病院清掃を受託している三洋ビル管理は、この未知なるウイルスの存在に恐怖を感じながらも「地域の健康と安全の拠り所となる病院を守る」という使命に燃え、作業に当たりました。ここでは、パンデミックに立ち向かう主役である医療従事者の影で、医療現場の安全と安心を支え続ける病院清掃業務スタッフの苦労に迫ってみました。

ウイルスに立ち向かう“武器”を持て!

2020年5月、400床以上の病床数を有する2つの総合病院を担当している清掃マネージャー・吉村は、日に日に感染者が増え切迫する医療現場で奮闘していました。 「多くの医療従事者や患者さんで溢れる病院の衛生環境を守ること、それと同時にそこで作業に当たる清掃スタッフの安全を確保することが、私に課された大きな役割でした。なにせ当時は、新型コロナウイルスについてわからないことばかりでしたので、担当者としてどうすればいいのか、毎日頭を悩ませていました」と振り返ります。 さまざまな講習会に参加したり、ニュースや文献から情報を得たりという地道な活動をしていたものの、このウイルスの正体を社会全体がまだ把握しかねていた時期。現場でできうる対策は限られていました。 「未知のウイルスとはいえ、感染する仕組みはこれまでのウイルスと一緒のはず。ならば、今まで通りの病院清掃における感染対策を徹底するしかないと思いました」と腹を括った吉村。病院清掃のプロフェッショナルとして磨き上げてきた技と知識を再検証し、スタッフへ共有を図りました。 三洋ビル管理の病院清掃で採用しているのは「オフロケーション方式」と呼ばれる清掃方法です。これは一定面積の清掃に使用したモップを、バケツで洗い、手で絞って使うのではなく、その都度新しいモップに交換するという手法。道具の準備にコストはかかるものの、常に清潔なモップを使用するので、モップに付着したウイルスを広めてしまう心配がないことから、三洋ビル管理ではこの清掃方法を採用しています。 「毎日300枚以上のモップを持ち込み、拭き掃除をしてはこまめに取り替える。衛生的な環境を提供するために取り入れている手法です」 夏が近づくと、マスク着用により息苦しくなる清掃現場。陽性患者の入院する病棟では、全身防護服に身を包み、体力的にも精神的にも経験したことのないプレッシャーと向き合いながらも、ウイルスとの勝負に清掃スタッフは挑み続けました。そしてこの強大な敵との戦いは、新型コロナウイルスの世界的な蔓延が始まり3年が経とうとしている現在でも続いています。

恐怖心に打ち勝って得た使命感

未知なる敵との戦いを続けるには、こちらがいかに有効な“武器”を持って挑めるかということが重要です。そのための準備をするのも、現場で指揮をとる吉村の大切な役割です。 「ウイルスに有効な洗剤や、作業効率向上に役立つ清掃方法などの情報には、ウェブサイトやメディアを通して吸収するようにしています。またマネージャー職は全員が病院清掃に関する資格を取得しているほか、研修や講習会へ参加してウイルスに対する“理論武装”をしています」 最後に、ここまで医療従事者とともに新型コロナウイルス感染症対策の最前線に立ち、日々奮闘する立場としての素直な想いを吉村に尋ねてみた。 「もちろん最初は、モップを持って現場に立つのが怖かったです。スタッフ全員が、それなりの覚悟と勇気を持ちながら臨んでいたものの、『もしかしたら自分も感染しているかも』という恐怖心は常にあったと思います。それでも今日まで戦い続けてこられたのは、現場で必死に頑張る医師や看護師のみなさんからの『ありがとう』という言葉があったから。そういった方々と一緒に、自分たちが二次感染を食い止めているという使命感とやりがいが大きなモチベーションとなっています」 社会的には徐々に落ち着きを取り戻してきた感がある、新型コロナウイルスとの戦い。しかし今後も新たな感染の波は訪れるでしょう。「地域社会の安全を守るために命をかける医療従事者の裏で、その清潔な環境を維持するために懸命に働く、清掃スタッフがいることを少しでも思っていただければ嬉しいです」と微笑む吉村。その表情には、自信と頼もしさが溢れていました。

PROFILE

不動産マネジメント事業部
吉村 延国(2014年入社)
病院清掃受託責任者
清掃作業監督者
ビルクリーニング技能士
清掃作業従事者研修指導者

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